2025年9月18日木曜日

小田周二『永遠に許されざる者』 後

小田周二『永遠に許されざる者』

 水平尾翼の脱落と飛行経路
 事故調査委員会の報告書では事故機は「一本から松」から「U字溝」を経由して墜落地点に入り、裏返しに衝突して墜落したとしている。これ自体は間違いない飛行軌跡である。だが、不可解なことに事故調の報告書にはこれ以前の飛行経路が示されていないのだ。
 そのため、どうしても理解不能なことが出てきてしまう。つまり、水平尾翼の残骸が、「U字溝」の真上部500mも離れた位置に落下していることが説明できないのである。巨大な水平尾翼の残骸は飛行航路のほぼ真下に落下するはずであるから、事故機はこの水平尾翼の残骸落下の地点を飛行したと想定される。しかし、事政調は 事故機がU字溝で右主翼先端が地面を削り取った際の衝撃により、水平尾翼がとんでもない方向に飛び散ったと説明している。しかし、巨大な金属塊である水平尾翼が飛行方向の後方ではなく真横に500mも飛散するということは科学的に成立しないことは明らかである

 さらに事故機は18時55分57秒から猛烈な急降下、すなわち墜落事象に陥っている。これは姿勢制御にとって死活的に重要な水平尾翼の脱落が原因であると考えるのが自然だ。しかし、事故調の主張によれば水平尾翼は18時56分26秒の「U字溝での接触」で「水平方向に吹き飛んだ」ということになるので、これでは時系列的には、「墜落事象の発生後に水平尾翼が脱落した」ということになってしまう。明らかに順序が逆なのだ
 この事故機に起きた激しい衝撃を「ミサイルの衝突」ととらえると、墜落や重要保安部品の脱落との前後関係は下図のようにまとめられる。
 図の左側の点線のところから事故機が入って来る。ちょうど川上村のレタス畑に着陸を敢行しようとして、諦めてタッチ・アンド・ゴーをして扁平山、三国山を回って急上昇してきたところである。そして事故機は3000メートルまで急上昇してから、ミサイルの攻撃を受け、水平尾翼が落下し、バランスを崩して、急降下し、一本から松、U字溝に接触しながら御巣鷹山の斜面に激突するまでの航跡を示したものである。



事故直前の飛行状況

 さらに、下図から、水平尾翼と第4エンジンの落下位置及び飛行経路を確認すると、中央上に水平尾翼、そして中央下に第4エンジンがあることが分かる。水平尾翼の落下位置からすると飛行経路は水平尾翼の上を通り、そこから右へ大きく旋回して、「一本から松」への接触後に、右主翼がU字溝を削り取ったあたりで第4エンジンの本体が脱落したと考えるのが自然である。

http://okukundonadona.g2.xrea.com/nonfic/eien2.html

小田周二『永遠に許されざる者』


後編


報告書には墜落の「事故原因」が書かれていない。
 小田氏は、事故調査委員会の報告書の最大の欠陥は、123便が墜落した原因が明記されていないことだ、と指摘している。つまり、この報告書でも123便が垂直尾翼の破壊脱落の後も「不安定な状態」ではあっても「飛行の継続ができた」という事実を述べているが、その継続飛行していたものがいきなり墜落に転じたのはどうしてなのだろうか、ということである。

 ・川上村レタス畑から上野村への飛行の軌跡
 横田基地方面を目指していた123便は、それから10分ほどで長野県川上村の梓山に到達していた。そこで、最後の手段として高濱機長はレタス畑への不時着を試みている。
18:54:06
 機長 「はい、左」―五郎山を避ける。
 機長「あたまを下げろ」―レタス畑への着陸態勢に入る。
 機長「フラップ、降りるね?」―減速指示
 副操縦士「フラップ10?」―減速しつつ揚力を高めて降下する操作。
 ⇒薄着陸に入る前の標準的な操縦である。
 しかし、ここで機長はレタス畑に多数の農民を発見。接地場所、高度などから不時着が無理と判断して着陸を中止し、「復航」飛行に切り替えた。いわゆる「タッチ・アンド・ゴー」である。
 当時、レタス畑で農作業をしていた石川哲氏(38歳)は「まるで石を投げたらあたるような超低空飛行だった」と延べ、その後飛行機は三国山の方に向かって飛んで行き、「もうぶつかると思ったが、機首をぐっと持ち上げて、山の斜面を這うようにして上昇していった。機首の上部が後ろからでも見える程の急角度のままやっと尾根を超えた。姿が見えなくなって、数秒後に、黒い煙が、続いて白い煙が上がった」と証言している。
 レタス畑での不時着を諦めた事故機は無事「復航」して3,000mの飛行高度に上昇し、上野村の山岳地帯の1,500m級の山々との接触を避けながら、安全高度の飛行を行っていたが、その時であった。
18:55:45 機長らの絶叫音「アーッ」⇒事故機に異常事態が発生したことを示す。
生還還した落合氏の証言「物凄い横揺れがした」と一致する。
18:55:57 事故来急降下開始(制御不能の墜落事象の開始)。
DFDRデータの飛行高度を参照
     (フライトレコーダーの18:56:00の飛行高度の変化)
18:56:30 123便、御巣鷹の尾根に墜落
 このように、18時55分45秒に異常事態が起きてから45秒後の56分30秒に123便は墜落している。(520人死亡、4名重傷の被害)。

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