2025年11月5日水曜日

尿管結石を包んでまとめて除去してくれる「逆服薬ゼリー的手法」が誕生 - ナゾロジー

尿管結石を包んでまとめて除去してくれる「逆服薬ゼリー的手法」が誕生 - ナゾロジー

尿管結石の40%は手術しても取り残されている

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Credit:Magnetic retrieval of kidney stones via ureteroscopy in a porcine model

「腎臓の結石が磁石で取れたら…」そんな冗談みたいなことを考えた人は案外多いかもしれません。

特に腎臓結石の激しい痛みに一度でも苦しんだ経験のある人ならなおさらでしょう。

実は、最新の研究によってそれが冗談では済まなくなるかもしれないのです。

そもそも腎臓にできる結石とは、体のなかで結晶化した小さなミネラル(鉱物)が、腎臓や尿管などをふさいでしまう病気です。

小さな石でも尿の通り道が詰まると、非常に激しい痛みを伴います。

そこで現在、一般的に行われている治療が「レーザー砕石術(さいせきじゅつ)」という手術です。

これは、細く柔らかな管状のカメラ(内視鏡)を尿道から入れ、腎臓まで進めて、結石をレーザーで細かく砕く方法です。

しかし、砕いた結石をどうやって回収するかが問題でした。

従来の方法では、レーザーで細かく砕いたあとに、バスケットカテーテル(小さなかごのついた細い器具)で、破片を一つひとつ地道に拾い上げる必要があります。

この作業は想像するだけでも気が遠くなるほど手間がかかり、術者はもちろん、患者さんにとっても負担が大きいのです。

しかも、この「かご」では小さすぎる破片をすべて拾いきれません。

実際、手術後の患者さんのうち約40%で、破片が腎臓や尿路に残ってしまうことが報告されています。

残された破片は、尿路を再びふさいだり、細菌感染を引き起こしたり、さらには再び結石の芯になって再発の原因となることがあります。

では、徹底的に細かく砕いて「砂」のようにサラサラにすれば、破片が勝手に尿と一緒に流れ出るのではないか?

最近では、そうした考えで「粉砕モード」と呼ばれる処置を行うこともあります。

ところが実際には、その粉末状の破片の多く(約75%)が尿と一緒に流れ出ず、腎臓に残ってしまうことが知られています。

結局のところ、粉にしても安全という保証はありません。

微細な破片から再び結石が大きく育ってしまい、再発するケースも少なくないのです。

さらに最近では、こうした微細な破片を吸引する「吸引デバイス」も登場しています。

しかしこれも完全な解決とはいきません。

石をきれいに粉砕しないと吸引できないうえ、破片が詰まってしまうと尿路内の圧力が急上昇し、腎臓に負担がかかるリスクがあると報告されています。

つまり、どの方法をとっても「結石破片をすべて安全に除去する」という課題は、泌尿器科の分野で長らく未解決のままでした。

この難問に、今回スタンフォード大学の研究チームが立ち上がりました。

彼らが提案したのは、「砕けた結石に磁石でくっつく性質を与え、一気にまとめて回収する」という新しい発想です。

「磁石で一網打尽」というのは、かなり大胆に聞こえますが、科学的な仕組みは意外なほどシンプルで理にかなっています。

もし本当に砕けた結石を砂鉄のように磁石でまとめて回収できるなら、手術の常識が根本から変わるかもしれません。

それにしても、本当にそんなことが可能なのでしょうか。

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