2026年9月20日日曜日

【吉備素子さんが痛烈批判】クローズアップ現代は火消し番組? - 【日航ジャンボ機墜落事故】調べ疲れた人のための羅針盤

【吉備素子さんが痛烈批判】クローズアップ現代は火消し番組? - 【日航ジャンボ機墜落事故】調べ疲れた人のための羅針盤

【吉備素子さんが痛烈批判】クローズアップ現代は火消し番組?

「火消し」ではないか ー 遺族・吉備素子さんの抗議

8月26日放送の「クローズアップ現代」について、遺族の吉備素子さんは、「あまりのひどさに驚きました」という書き出しで、8月30日付けに青山透子さんのブログを通じて抗議文を公開しました。

金子国交相の発表は8月25日だったのに、なぜ番組は事故の日である8月12日ではなく26日に放送されたのか

吉備さんは、青山透子さんの新著が話題になったことへの「火消し」だったのではないかと見ています。

「氏名不詳」への疑問

吉備さんが問題視したのは、米国での訴訟でボーイング社は修理担当者を「氏名不詳」として一切表に出さなかったことです。

この点は「【逮捕が怖くて話せない】NHKクローズアップ現代「新証言」の中身」で紹介したショート動画で検察官の千葉さんが語った「関係者の刑事免責を認めない限り協力できない」というボーイング側の姿勢とも重なりますが、吉備さんはさらに踏み込みます。

2019年の情報開示裁判の準備の際に弁護団と過去の裁判記録を精査したところ、不起訴の際の遺族説明会で前橋地検の検事から「実は氏名がわかっていた」との話を聞いたとし、当時の検事正が「修理ミスは疑わしい」と述べたとも主張しています。

1985年の「受注最高」報道

吉備さんはさらに、1985年12月27日付の新聞各紙に「今年6機落ち、死者1100人だが、ボーイング受注最高」という記事にも言及。事故が起きた1985年という同じ年に、防衛庁がボーイング機を大量購入したという情報や、中曽根康弘首相とレーガン大統領の往復書簡の中で、全日空がボーイング機を購入したことへの謝意が示されていたという情報も紹介しています。

吉備さんは「墜落した年に、日本政府がその会社の飛行機を大量に買っていたのは裏取引ではないか」と訴えています。

抗議文の最後で吉備さんは、番組で語られたボーイング側の説明を「矛盾とデマと嘘の発言」だとして、今回の放送内容そのものを録画・記録し、法廷で改めて決着をつけたいという考えも示しました。40年以上前の裁判の記憶を、41年目のテレビ番組が呼び覚ました形です。

「圧力隔壁は壊れていない」松田智さんの技術的反論

9月4日、独立言論フォーラム(ISF)に掲載された松田智さんの記事は、遺族の抗議とは異なる角度からNHK番組を批判。松田さんが問題視するのは、番組が前提としている「圧力隔壁破壊説」そのものです。

事故調査報告書の本文には「推定される」とあるだけで、圧力隔壁の破損が墜落原因だと断定してはいない、というのが松田さんの指摘です。

吉備さんの抗議文がボーイング社の対応や利害関係という周辺事情への疑問であるのに対し、松田さんの記事は、事故原因の骨格そのものに向けられている点で性格が異なります。

復元写真に「大穴」がない

松田氏は、報告書に載っている圧力隔壁の復元写真・復元図を見る限り、
・垂直尾翼を吹き飛ばすほどの空気が漏れ出したはずの大きな損傷部分が見当たらず、ほぼ「お椀型」を保っている
・墜落現場ではこの圧力隔壁がほぼ完全な状態で見つかっていたものの、自衛隊が輸送のために切断し、後から組み直したのが復元写真
と指摘しています。

この切断は、修理の際にボーイング側の作業員が接続板を切ったという話とは別の出来事であり、墜落後の現場での対応だったと。加えて、機内写真では乗務員が通路を歩くなど平静な様子が写っており、生存者の証言や遺書にも急減圧を示す兆候が見られないとも述べています。

「本当の原因」をめぐる仮説

松田さんはさらに、垂直尾翼が壊れても機体はその後32分飛び続け、大月市上空では旋回飛行もできていたとして、横田基地への着陸直前に第4エンジンが破壊されたことこそが墜落の真因ではないかという見方を示しました。

また、前橋地検が不起訴としたのは無罪を確信したからではなく、報告書の内容があいまいで証拠として採用できなかったためだ、とも主張しています。

報告書付録にある「異常外力の着力点」の図が、NHK番組にも大手紙にも一切登場しないことにも触れ、公開情報であるはずのこの図がなぜ表に出ないのか疑問を投げかけています。この図が実際に何を示しているかという技術的な検証は、当ブログの関連記事で複数回取り上げています。

何を伝えなかったのか

吉備さんは遺族としての当事者性から、松田さんは物証・技術面から、それぞれ異なる根拠でNHK番組に異論を唱えており、二人に共通するのは、番組が伝えなかった部分にこそ大事な論点があるはずだ、という不信感のように感じました。

番組が示した「事故調査と刑事捜査のジレンマ」という切り口と、遺族・市民記者が投げかけるこうした異論のどちらが正しいというより、41年たった今も検証の余地がこれだけ残っている、という事実そのものが、この事故の重さを物語っています。

なお、吉備さんの主張は個々の周辺事実についての疑義であり、松田さんの主張は事故原因の骨格に関わるものなので、両者は矛盾するというより、それぞれ別の角度からNHK番組の不十分さを指摘。一つの番組をめぐって、これほど性格の異なる反発が同時に噴き出したこと自体、この事故がまだ「決着した過去」にはなっていないことを示しています。

クローズアップ現代の出演者に偏りはなかったのか

これは私個人の感想ですが、遺族として真相究明に尽力しているのは美谷島氏だけではなく、吉備素子氏や小田周二氏もです。しかも真相究明という点においては、2人とも血のにじむような努力を重ねてきながらこの41年を過ごしてきました。なぜNHKは、遺族として美谷島氏だけを出演させるのでしょうか。

また、ノンフィクション作家の吉岡忍氏を出演させるなら、なぜ「疑惑」の角田四郎氏は出演させないのでしょうか。都合がつかなかったのかもしれませんが、それでも「疑惑」が出版されてから後、アントヌッチ証言が出るなど多大な影響を与えていることは言うまでもありません。

捜査側の描き方にも偏りを感じます。番組に登場したのは前橋地検の千葉さんだけで、現場での捜査を担った群馬県警の関係者は一切出てきませんでした。なぜ検事だけが語り、警察は語らなかったのか。ボーイング社、日本航空、事故調査委員会も含め、事故に関わったあらゆる立場の人選を見渡しても、今回の番組は偏っているように感じます。

公平性を期すのであれば、NHKには吉備さんの指摘に応じた第二弾、第三弾の番組をぜひ企画してほしいと思います。

参考・出典

吉備素子さんの抗議文(青山透子オフィシャルブログ)
松田智「日航123便事件をめぐるNHK番組に対する大いなる違和感」(ISF独立言論フォーラム)

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