2024年8月29日木曜日

自民党総裁選の陰でうごめく台湾…「高市早苗・蔡英文ウェブ対談」の違和感 | ビジネスジャーナル

自民党総裁選の陰でうごめく台湾…「高市早苗・蔡英文ウェブ対談」の違和感 | ビジネスジャーナル

 高市氏が経済産業副大臣を務める時代に産業力再生特別措置法(産活法)の改正案が可決され、産活法でエルピーダメモリに対して資金を出す見返りとして、生産を台湾に移管することを要請した。エルピーダメモリ倒産のきっかけとなったのが、高市氏が経産副大臣時代の改正産活法であったことを振り返ると、蔡英文総統の甘言に乗って「日台で半導体サプライチェーン」を構築すれば、日本の技術が台湾に流出し、日本の産業が崩壊する危機に見舞われるだろう。

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自民党総裁選の陰でうごめく台湾…「高市早苗・蔡英文ウェブ対談」の違和感

自民党総裁選の陰でうごめく台湾…「高市早苗・蔡英文ウェブ対談」の違和感の画像1
「Getty Images」より

 メディアは自民党総裁選の話題で賑わっている。テレビなどの大手メディアだけでなく、SNSなどインターネット上のメディアも総裁選一色だ。

 男性2人、女性2人の総裁候補で、もっとも政策の出来栄えの良い高市早苗候補が、当初の泡沫候補扱いから猛追して、今や2位の岸田文雄候補を抜かんとするばかりの勢い。

 そんななかで、ひとつ違和感を抱いたのが「高市早苗蔡英文ウェブ対談」のニュースである。蔡英文氏は台湾の民進党主席で総統だが、今回は台湾総統という肩書を外し「民進党主席」の立場で高市氏とウェブ対談を行うかたちをとり、外交上の配慮がなされている。

 ところが、これに一部の米政府関係者が首をかしげている。「総統」の肩書を外す配慮をしたとはいえ、事実上、日本の首相を決める選挙に、外国の首脳が応援を行っているわけだ。たとえば、他の候補が「個人として習近平と対談を行った」としたら、世論はどういう反応を示すだろうか。

 高市氏は政策、討論、質疑応答ともに申し分ない能力を発揮されてきたにもかかわらず、大事なところで「逆の立場からどう見えるか」という客観性を欠いたといえるだろう。今回の総裁選の見どころは、高市氏のネット戦略にある。

 2016年が「データドリブン型選挙の幕開け」であると、拙著『米中AI戦争の真実』(扶桑社)において紹介した。それが自民党の総裁選や党内の派閥争いで見られるとは予見していなかった。

 河野太郎候補は、それまで広告代理店を利用してウェブ対策にかなり力を入れてきたとみられるが、ツイッター上で河野氏をやたら持ち上げるアカウントがあったり、彼のYouTubeも面白くもないのに数十万回も再生されたりしてきた。印象としては、反対陣営を罵って回る維新のネット対策とは異なり、比較的王道のネット対策だ。

高市陣営のネット対策

 一方、高市陣営のネット対策は見事だった。

 そもそも、政策のマーケティングがしっかりしており、保守派へのアプローチに申し分のない出来栄えである。そして、初期には主流保守派メディアでの有名人を中心にブランディングを行い、そこからウィングを中間層へと広げていく過程で文言を調整していき、「右翼」というイメージから「思ったより極右でもない」へとイメージ転換を遂げた。そして最終的には、40代、50代の中間から中道右派にもリーチできるように著名人とのコラボ動画の配信を行い、「政治家なのにお茶目」というイメージアップも図った。

 その一方で、ネット対策でのミスも見られる。

 反対陣営を罵って回る「維新風」のネット対策もあり、かなりの人数が煽られたとようだ。そしてよく見たら、他候補を罵倒するチームに、維新のネット対策チームである通称「維新ジャー」がチラホラ観察された。

 筆者が3年ほどモニタリングしてきたところ、維新ジャーは広告代理店が運営するネット世論対策チームであり、日本語が堪能な中国人や台湾人も複数見られる。

 普段の選挙では、選挙区内の自民党候補を罵倒して回っているのだが、今回は高市氏を応援し、他の候補を罵倒して回っている様子が見られた。反対陣営を罵倒して回ると高市ファンは喜ぶが、中間層が引き気味になる。さすがに高市氏もまずいと思ったのか、「他候補への誹謗中傷や恫喝や脅迫によって確保される高市支持など私は要りません」との声明を発表するに至ったというわけである。

 今回、筆者が関心を持ったのは、河野氏の親族が経営する会社である日本端子が、中国大手ディスプレイ企業「京東方(BOE)」と合弁会社をつくるなど、深い関係があるという点である。これがネットで批判を浴びる原因となった。

台湾の巧妙な「親日プロパガンダ」による罠

 他方、高市氏は周囲が自民党・台湾PT(プロジェクトチーム)や親台湾派保守で固められている。

 ところが、ここでいう「親台湾派」というのは、「本省人」と呼ばれる戦前からの台湾人ではなく、戦後移住してきた「外省人」のことを指す。

 台湾PTは台湾半導体企業の利益を代弁し、TSMC誘致を扇動したチームであり、他はパナソニック半導体が窒化ガリウムというデュアルユース技術を持っていると知りながら、台湾の新唐科技に売却するように動いた政治家たちである。

 BOEはディスプレイ分野で台湾外省人企業のフォックスコンと対立し、また、新しくメモリビジネスを立ち上げようとしているので台湾外省人メモリ企業ウィンボンドや新唐科技の競合でもある。

「高市応援」を装った、台湾外省人企業勢の「競合潰し」が同時に展開されているということで、簡単に言うと「中国人同士の派閥争い」である。

 さすがに高市氏も、利用されていることに気がついたのではないだろうか。今回、個人的に、高市氏が台湾の「親日プロパガンダ」による罠に嵌められないかとヒヤヒヤしてみている。

 特に、宋美齢と蒋介石の後押しで政治家となった蔡英文総統は、「日台で半導体サプライチェーンを強化しましょう」と、日本の半導体技術乗っ取りを上手に隠しながら日本へ提案し、それを保守派も歓迎している。

 よく見れば、車載チップをトヨタ自動車に出し惜しみしているのは、TSMC、焦佑鈞のウィンボンドと新唐科技など、台湾外省人勢なのだ。犯人が「救世主」に成り済まそうとしているわけである。

 彼らは日本に恩を売り、高市氏が総裁となった暁には、これまでトヨタへ止めていた車載チップの出荷を一気に放出して「日台友好」を演出する準備をしている。

 それは、フォックスコンに売却寸前だったシャープが、フォックスコンからの影響でシャープ商品の出荷を止められて売り上げが下がり、フォックスコンへのシャープ売却後に一気に出荷を始めてV字回復したかのような演出を行ったときと同じことを準備しているわけである。

 高市氏の政策は全体的に申し分なく、素晴らしいものが多い。ただし、保守派が台湾と信じる外省人に利用されて、台湾の中国人と半導体サプライチェーンで組めば、日本の技術は根こそぎやられることになるわけである。

 高市氏が経済産業副大臣を務める時代に産業力再生特別措置法(産活法)の改正案が可決され、産活法でエルピーダメモリに対して資金を出す見返りとして、生産を台湾に移管することを要請した。エルピーダメモリ倒産のきっかけとなったのが、高市氏が経産副大臣時代の改正産活法であったことを振り返ると、蔡英文総統の甘言に乗って「日台で半導体サプライチェーン」を構築すれば、日本の技術が台湾に流出し、日本の産業が崩壊する危機に見舞われるだろう。

 個人的に、他の3候補の政策には大した魅力を感じず、政策で比較すれば高市氏がもっとも魅力的な政策を提示しているので頑張ってもらいたい。

 ただし、日本独自の半導体製造を再興させなければ、日本は台湾経由で中国の支配下になることは間違いない。誰が総裁になったとしても、半導体産業の再構築は日本が独自に成し遂げなければならない。

 今、トヨタの国内製造ライン28のうち27ラインがチップ不足で停止中だ。これを放置して台湾に依存すれば、日本の自動車産業540万人の雇用が失われる。

 私たちにとって大事なのは、国民の雇用を守り、生活を豊かにすることだ。
(文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト)

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