2024年10月3日木曜日

【ネパール】日本の掘削技術がヒマラヤのトンネル工事に挑む!|読むらじる。|NHKラジオ らじる★らじる

【ネパール】日本の掘削技術がヒマラヤのトンネル工事に挑む!|読むらじる。|NHKラジオ らじる★らじる

【ネパール】日本の掘削技術がヒマラヤのトンネル工事に挑む!

実は日本のトンネル技術は世界に誇る高い技術。現在その世界最高の技術を使って、ネパール初の道路トンネルが建設されています。想像を絶する難事業であるといわれているこのプロジェクトについて、現場所長の井上賢一(いのうえ・けんいち)さんに詳しくうかがいました。

【出演者】
井上:井上賢一さん(日本の建設会社勤務)
TOBI:レ・ロマネスクTOBIさん(番組MC)
中村:中村慶子アナウンサー


中村:
井上さん、ネパール初の道路トンネルを日本の建設会社が作っているのはどうしてですか?

井上:
日本の高いトンネル技術を知っているネパール政府から日本政府に支援の依頼があり、厳しい技術審査などを経て、日本の企業を中心として工事が進められることになったんです。

TOBI:
日本のトンネル技術はそんなに高いんですか!

井上:
そうですね! 日本のトンネル掘削技術は"世界一"ともいわれていて、その採掘技術の豊富さから「トンネル百科事典」と言っていいくらいだと思います。

TOBI:
日本は「トンネル百科事典」なんですか?

井上:
そう言えると思います。
それにはいくつか理由があって、まず日本はトンネルの数が非常に多い。数でいうと世界第2位を誇る豊富な実績があって、しかもその多くが記録としてきちんと残っているんです。
さらに日本の地質は世界一複雑ともいわれていて、多様なプレートや断層に合わせて独自に発達した掘削工法や機械、資材がたくさんあります。

中村:
それほど高い技術じゃないと、ネパールはトンネルを掘るのが難しいところなのでしょうか?

井上:
かなり難しい場所でしたね。
ネパールはヒマラヤ山脈を要する山岳国で、2015年には9,000人もの死者が出た大地震が発生したこともご記憶にある方もいるかもしれません。地盤の動きや変形も想像以上に大きな規模で起こる難しい土地なんです。さらにネパールの岩石がさらに工事を難しくさせました。

ネパールの岩石を持ってきましたので、ちょっと見てもらえますか?? 今回分析のため岩石を持ち帰っています。

中村:
これは薄く層になっているようにみえますね。

井上:
そうですね。8,000m以上も地面が隆起するぐらいの圧力が岩盤にかかり続けると、こんなふうに岩石が薄く剥がれやすい性質に変わっていきます。この岩石、掘るのに非常に苦労しました。

中村:
なるほど。"地盤が動くこと"と"岩石が変質してもろいこと"という理由で掘るのが難しいんですね。
ヒマラヤ山脈の圧力ということなんですけど、あの高い山脈を突っ切るようなトンネルなんでしょうか?

井上:
いやいや、このトンネルはヒマラヤの直下を掘り進めるのではなく、ナグドゥンガ峠という1,500m程度の比較的低い峠に建設しています。それでも高い圧力が作用していて難しいところですね。

TOBI:
道路トンネルということで、どこをつなぐ道路になるんでしょうか?

井上:
首都カトマンズと主要都市やインド国境を結ぶ幹線道路上にできる予定です。現在のこの道路は山岳地帯にあるため曲がりくねっていて、貨物を満載した大型トラックがヨロヨロと上るほどの急勾配で、渋滞の名所となっています。それを2,668mのトンネルでショートカットしようというものですね。

中村:
トンネルの開通が待ち望まれていることと思いますが、トンネル工事はすんなり進んだんでしょうか?

井上:
全然、すんなりとはいきませんでした。実際このトンネルは今年の4月に貫通したばかりですが、これは計画の倍近くの時間がかかっています。

TOBI:
もう一般の人が使えるんですか?

井上:
まだですね。貫通はすでにトンネルを両側から掘っていって、ある地点でそれがつながります、それが貫通です。トンネルが完成して一般の人が通れるようになるのが開通ですね。

中村:
工事はどのように進めていったのでしょうか?

井上:
そもそも地盤が動きやすい土地に加えて、先ほどお見せしたように、岩石も非常にもろいことがわかりました。この地盤は大変だ! ということで、日本でトンネルに使われている一番大きな鉄骨を緊急輸入し、骨組みとして固めていったのですが、それでも掘っているうちに圧力に負けてひん曲がってしまい、さらには真っ二つにちぎれてしまって役に立たなくなるほどでした。最大クラスのこの鉄骨が切断された、というのは日本でも見たことはもちろん聞いたこともありません。

TOBI:
日本最大クラスの鉄骨が切れちゃったんですか! 打つ手ないじゃないですか!

井上:
それは大変な衝撃でしたね! でもですね、トンネルは固められているコンクリートで支えていると思われがちなのですが、トンネルを一番支えているのは周りの地盤です。地盤の支える力を最大限に発揮させよう、というのが現代のトンネル設計の考え方です。しかし岩石がもろくなっていることから、地盤が安定しませんでした。

中村:
それをどうやって解決したんでしょうか?

井上:
日本から、0.1mm単位で地盤の動きを測定できる機械を持ってきて毎日地盤の動きを細かく評価しました。すると他のトンネルにはない、ある特徴に気づきました。トンネルを掘っている間は地盤がすごい勢いで押してくるのですが、掘るのを中断すると、地盤の動きも嘘のようにピタっと止まるんです。この状況は非常に珍しく、他の現場では聞いたことがない現象です。

中村:
掘るのを中断すると、どうして地盤の動きも止まったんでしょうか?

井上:
観察や計測・分析の結果、"剥がれやすい岩石"によってこの状況が起きていることがわかりました。パカッと剥がれる性質に加えて、もともとかかっている圧力が高く、掘り進める圧力変化の影響を受けやすい地盤だったということですね。逆に掘らずに圧力を変化させなければ、剥がれる動きも止まり安定するというわけです。
普通のトンネルでは、岩石は亀裂が剥がれるのではなく、亀裂がずれたり、押しつぶされたり、じわじわ変形するのが一般的で、ナグドゥンガは非常に珍しい状況でした。

TOBI:
なるほど。とにかく、休み休み掘れば、なんとか掘削できる地盤だったんですね!

井上:
そういうことですね! これに気づいた時は、ようやく光がさしたようでしたね。コンクリートや鉄骨がだんだん壊れていって、危なそうな状況になっても、いったんそこで掘るのを止めれば、余裕を持って壊された部分を交換、修理できるということですから。
さらには「どのタイミングで交換、修理するのが最も合理的か」「どのタイミングで補強を入れていくのが合理的か」ということにもつながっていきました。これは、日本のトンネル技術、経験値が最も役立ったといえると思いますね。少し地味ですけど。

TOBI:
貫通した時はどんな様子でしたか?

井上:
ドン! と最後の発破をかけて貫通させた直後、貫通点を挟んでその両側からみんな笑顔で手を振り合いながら声を掛け合ったのですが。当然のことなんですけど、みんな笑っているなあ、と。なんかそれが一番うれしかったです。
本当に大勢の人が携わったので、名前まで覚えられず、顔しか覚えていない人も多いのですが、目が合うたびに笑って手を振り合ったのは、一生忘れられないと思います。

中村:
すてきな瞬間ですね。現地の人はどのような方が参加されていますか?

井上:
当社の現場組織では8割のスタッフが若いネパール人です。彼らはトンネル工事の経験は初めてで、大学出たてでスタッフになった者も多いのですが、ヒマラヤ山脈を有するネパールで技術を志す者らしく、地盤や地質については強い関心を持って、とても熱心に仕事をしています。
ナグドゥンガトンネルプロジェクトの仕事を通じて、これからネパールのインフラ整備を進めるにあたって、地盤や地質の克服が極めて大切だということを強く感じている様子が見受けられます。

中村:
それだけネパールの発展に寄与するということですね。

井上:
発展と生活に役立つトンネルになると思います。ネパールの山地では雨期になると、いろんなところで土砂災害が起きます。道路が通れなくなると、もちろん生活に支障が出るのですが、緊急車両も通行できなくなります。

TOBI:
それは大変ですね! 救急車とかも通れなくなっちゃいますね。

井上:
そうなんです。4月に貫通したばかりでまだ仕上げ工事中のトンネルですが、この雨期中の土砂崩れ、土石流で道路が通行止めになった際、すでに緊急措置として何台か救急車を通しています。工事区間の終点まで送って行って別れる時に、救急車の運転手が笑いながら手を振ってくれるので、こちらもうれしくなります。開通後は、何百人、何千人の命を救う存在になるのではないでしょうか。

中村:
まさに日本の技術がネパールの人たちに役立っているんですね。

井上:
先日、この事業が評価されてネパール政府の方から、今後のトンネル技術向上に向けて、日本にその支援をお願いしたという話をお聞きしました。これはトンネル百科事典である日本にしかできないことだと思います。来年中の工事完了を目指していますので、最後まで油断せず頑張りたいと思います!

TOBI:
いやぁ楽しみですね。でも本当にここまで来ることができてよかったですね。"休み休み工事すればいい"というのが分かったのは本当に光が見えた感じですよね?

井上:
そうですね。本当に一時は終わらないんじゃないか、と弱気になることもあったんですが。たいていは解決策があって、"終わらない工事はない"ってよく言われるんですよね。

TOBI:
そうか! まさに光が見えたんですね。貫通する時にトンネルって光が見えてくるじゃないですか。だからトンネルを掘る行為が人生と似ているみたいな。

井上:
そうかもしれないですね!

中村:
開通したらぜひ、行ってみたいですね! 井上さん、どうもありがとうございました。

ちきゅうラジオ

ラジオ第1
毎週土曜・日曜 午後5時05分

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【放送】
2024/09/14 「ちきゅうラジオ」

ナグドゥンガトンネル本坑貫通式(2024年4月15日) | 在ネパール日本国大使館

ナグドゥンガトンネル本坑貫通式(2024年4月15日) | 在ネパール日本国大使館

ナグドゥンガトンネル本坑貫通式(2024年4月15日)

 4月15日、ナグドゥンガトンネルが貫通し、全長2,688mの本坑の掘削が完了しました。
 ナグドゥンガトンネルはネパールにとって初となる山岳交通道路トンネルであり、日本は220億ルピーを超える総事業費の4分の3を譲許性の高い借款で支援しているだけでなく、現場では日本企業がネパールの技術者・労働者とともに、ネパールの発展のために尽力しています。今後内装工事などを経て、トンネルが完成した暁には、交通の利便性が格段に向上すると共に、地域の経済振興にも大きく貢献します。
 本事業は2019年に着工しました。今も成長を続け、複雑に入り組んだ地層を有するヒマラヤの山岳地帯にトンネルを掘ることは想像を絶する難事業でした。坑内では、掘削作業中に予期せぬ出水や崩落に何度も見舞われ、坑外では、豪雨による法面の土砂崩れや新型コロナウイルス感染拡大により、作業の遅れを余儀なくされた時期もありました。
 工事を請け負った日本企業は、かつてシンズリ道路建設に当たった経験を踏まえ、ネパールの技術者と協力し、技術的な挑戦を続けてきました。本事業は日本の高度な技術をネパールの若い技術者に伝えるまたとない機会となり、将来ネパールの人々のために大いに役立つことが期待されます。

JICA/ネパールに道路トンネル建設で物流網を円滑化 ─ 物流ニュースのLNEWS

JICA/ネパールに道路トンネル建設で物流網を円滑化 ─ 物流ニュースのLNEWS

JICA/ネパールに道路トンネル建設で物流網を円滑化

国際協力機構(JICA)は12月22日、ネパールの首都カトマンズでネパール政府との間で「ナグドゥンガ・トンネル建設事業」を対象として、166億3600万円を限度とする円借款貸付契約に調印したと発表した。

<位置図>
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事業は、ナグドゥンガ峠において、ネパールで初となる山岳道路トンネルを建設するもので、約2.5kmのトンネル(2車線)の建設を進める計画。

ナグドゥンガ峠を通過する時間(現状:東方向で30分、西方向で20分)が約3分の1に短縮され、人や物の移動が円滑になることで、地域の社会・経済発展に貢献することが期待される。

ネパールは、国土の約8割が山岳地帯の内陸国であり、人や物の移動の多くを道路に依存するとともに、輸出入の約6割を陸続きの隣国インドに依存している。

インドからの物資は、インド国境であるビルガンジから、ナラヤンガート、ムグリン、ナグドゥンガを経由し、首都カトマンズに至る道路により輸送されており、この路線はインドとの陸上交易の約6割を担う重要路線となっている。

一方で、同路線のカトマンズから約15kmのところに勾配10%以上の急峻なナグドゥンガ峠(標高800m~1500m)があり、急な勾配やカーブにより慢性的な交通渋滞が発生することから、年率約6%のペースで交通量が増加していると言われるナグドゥンガ峠のスムーズな通行が物流の大きな課題となっていた。

貸付資金は、トンネル、アクセス道路、橋梁等の建設・整備にかかる土木工事とコンサルティング・サービス(詳細設計、入札補助、施工監理、運営・維持管理能力強化等)に充当される。