イスラエルを止めるための「正しい言葉」【寄稿】
スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授
小説『悪魔の詩』の作者サルマン・ラシュディは5月20日、パレスチナ国家が樹立されたら、ハマスが統治する「タリバンのような」政府になると主張した。彼はまた、進歩的な人たちが「ファシストのテロ集団」であるハマスを支持してイスラエルを批判するのは「奇妙なこと」だとも述べた。 私はラシュディの意見に同意しない。タリバンはどのようにして統治することになったのか。かつてのアフガニスタンは比較的近代化に対して開かれていた国だった。そうしたなか共産主義勢力がクーデターを起こすと、ソ連がそれを支援するために軍事介入し、ソ連の影響力が広がることを阻止するために米国とパキスタンがイスラム抵抗勢力に武器を供与したことによって、私たちが知る現在のアフガニスタンになった。すなわち、比較的平和かつ多元主義的だったアフガニスタンを原理主義的かつ権威主義的な体制へと導いたのは、ソ連、パキスタン、米国のような外国の介入だった。 これと同様に、パレスチナ占領地域のパレスチナ人がハマスの暴力的な抵抗に同調するよう追い込んでいるのは、他でもないイスラエルが行っている政策だ。パレスチナ人が自ら政治化することをイスラエルが容認しないためだ。簡単に言うと、イスラエルは、自分たちの行っている民族浄化と領土拡張行為を正当化するために、パレスチナを「ハマス化」しているのだ。このような点で、イスラエルが民間人を対象に犯す軍事的テロを止め、パレスチナを国際法とルールに従う合法的な政治勢力に導くことができる唯一の方法は、パレスチナを国家と認定し、イスラエルが占領地で犯す行為を反人道的犯罪として糾弾することだ。 幸いなことに、最近になり、スペイン、アイルランド、ノルウェーがパレスチナを国家として認定した。国際刑事裁判所(ICC)は5月20日、イスラエルとハマスの指導部に対して逮捕状を請求し、フランスとベルギーがこれを支持した。ところが、もはや驚くべきことでもないが、米国のバイデン政権はICCを制裁すると脅し、リンゼー・グラム上院議員は「ICCがイスラエルにそのようなことをするのであれば、次は米国の番になるだろう」と主張した。よく言った。かつてのICCはアジア、アフリカ、南アメリカの諸国ばかりに介入したが、今こそ「法に基づく国際秩序」を全世界に例外なしに適用しなければならないときだ。 5月24日には国連の最高裁判所である国際司法裁判所(ICJ)が、イスラエルに対してガザ地区最南端のラファへの攻撃をただちに中断するよう命令した。ただし、この判決には強制力はない。これに対して冷笑主義者たちは、イスラエルを公の場で非難するこのような行為はむなしいだけでなく、戦場の状況に何の影響も及ぼすことができないと批判する。そうではない。ICCの逮捕状とパレスチナを国家と認定しようとする動きに、親イスラエル勢力がひどく慌てているのをみれば、形式的な動きでも重要だということがわかる。 サルトルは「権力が真実を語ることを有用だと判断するのであれば、それはよりよい嘘を探すことができないためだ。その真実は、公の口から出た瞬間に事実によって支えられる嘘になる」と書いた。西側諸国が、ガザ地区とヨルダン川西岸地区で行われているイスラエルの軍事的暴力に対して、口では「懸念」を表明しながらも、イスラエルに武器の供給を続けていることがそのような例だ。 しかし、嘘にならない真実を語る方法は存在する。パレスチナを国家と認定し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対するICCの逮捕状に従うことだ。厳粛な言葉があふれる時代だが、私たちはすべての言葉が同じではないことを、今でも本当の効果を発生させる言葉があることを、忘れてはならない。「言葉だけでなく行動せよ」と言われるが、今はこの当然の言葉を「誤った行動をするのでなく、正しい言葉を言え」に変えなければならないようだ。 スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
0 件のコメント:
コメントを投稿