2026年8月13日木曜日

【ノーカット】米政府との合意「満足」 日鉄がUSスチール買収を完了 経営自由度と採算性確保20250619 7:03 黄金株は日本製鉄側から提案 24:28 27:54

師のヘルマン・コーヘンはカント寄りだがローゼンツヴァイク自身はヘーゲルを批判しつつもヘーゲル寄り(自然学と論理学の位置がヘーゲルと…






師のヘルマン・コーヘンはカント寄りだがローゼンツヴァイク自身はヘーゲルを批判しつつもヘーゲル寄り(自然学と論理学の位置がヘーゲルと逆)。
ユダヤ教はキリスト教出現でアウフヘーベンされるわけではないというのが骨子だろう。
デリダの近刊本(『言葉の眼』)にシオニズムではないユダヤ教と書いてあったので読んでみたがこれならゾンバルトを読むべきだ。
シオニズムは救世主出現前に一箇所に集まるので敵に攻撃されやすく正統派ユダヤからは間違いだとされる。
ただそれだけのことだ。深刻な形而上学は必要ない。ゾンバルトの信用経済学理解は必須だが。
ただしそのヘーゲル譲りの哲学体系はそれでも興味深い。国土を必要としない神学・哲学体系ということか。
すべてはラスト③cのキリスト教とユダヤ教との差異に帰着する。


各巻巻頭の記号:
①△
②▽
③✡️

               /\
              /_門\
             星、永遠の真理
            /__\/__\
           /\③形態、あるいは
          /__永遠の超世界__\   
御国を     火、永遠の生\  /光線、永遠の道
祈りで得る可能性/__\/__\/__\/__\
       /\              /\
      /_移動  ローゼンツヴァイク /_敷居
     人間、メタ=   救済の星   /救済、未来
    /__倫理学_\        /__\/__\
   /①要素、あるいは\      /②軌道、あるいは\
  /__永続的な前世界_\    /つねに更新される世界\
 /神、メタ=  世界、メタ=  /創造、根拠  /啓示、誕生
/__自然学_\/__論理学_\/__\/__\/__\/__\
すべてを認識          奇跡を体験
 する可能性          する可能性

目次:
第1巻 要素、あるいは永続的な前世界
序論 〈すべて〉を認識する可能性について
第1章 神とその存在、あるいはメタ自然学
第2章 世界とその意味、あるいはメタ論理学
第3章 人間とその〈自己〉、あるいはメタ倫理学
移行

第2巻 軌道、あるいはつねに更新される世界
序論 奇跡を体験する可能性について
第1章 創造、あるいは事物の永続的な根拠
第2章 啓示、あるいはつねに更新される魂の誕生
第3章 救済、あるいは御国の永遠の未来
敷居

第3巻 形態、あるいは永遠の超世界
序論 御国を祈りによって手に入れる可能性について
第1章 火、あるいは永遠の生
第2章 光線、あるいは永遠の道
第3章 星、あるいは永遠の真理

訳者あとがき
事項索引
人名索引

敷居における本人の全体解説を図解:

        神①a
        /\   
 創造____/__\____啓示②b
 ②a\  /    \  /
    \/      \/
    /\      /\
   /__\____/__\
 世界①b  \  /    人間①c
        \/
       救済②c

①神学者たちへ
②哲学者たちへ
③僭主たちへ


以下の原著初版に小見出しはない。第二版以降に小見出しがついた。
邦訳小見出しは上位と下位が分かりにくいので(記号をつけたヘーゲルは偉い)以下の英訳を参照した。
The Star of Redemption (English Edition)
英語版 Franz Rosenzweig (著), William W. Hallo (翻訳) 形式: Kindle版

以下、ローゼンツヴァイク『救済の星』見出し付き詳細目次:

    第1巻 要素、あるいは永続的な前世界

序論 〈すべて〉を認識する可能性について 3
死からの出発3
〈すべて〉の哲学6
・ヘーゲル8
・キルケゴール9
・新しい哲学10
・ショーペンハウアー10
・ニーチェ12
人間13
・メタ倫理的なもの14
世界15
・メタ論理的なもの17
神21
・メタ自然的なもの22
数学と記号27
・根源29

第1章 神とその存在、あるいはメタ自然学 33
否定神学33
・二つの道34
・方法について35
神的自然37
・根源語38
・記号39
神的自由40
・記号44
神の生動性44
・根源語46
・記号48
神話のオリンポス48
アジア──非神話的な神50
・中国53
・原始的な無神論54
美の基本諸概念──外的形式55
神々の黄昏56

第2章 世界とその意味、あるいはメタ論理学 60
否定的宇宙論60
・方法について61
世界的な秩序62
・根源語、記号64
世界のゆたかさ65
・記号67
世界の現実性68
・記号73
造形的な宇宙(コスモス)76
・古代の宇宙論77
・プラトンとアリストテレス78
・ポリス80
・ひとの住む世界(オキュメネー)82
・ソフィスト83
アジア──非造形的な世界84
・インド84
・中国86
・原始的な現象主義88
美の基本諸概念──内的形式88
世界の眠り89

第3章 人間とその〈自己〉、あるいはメタ倫理学 92
否定的心理学92
・方法について93
人間の各自性94
・根源語96
・記号97
人間の意志98
・記号99
人間の自立性100
・記号102
英雄のエートス105
・さまざまな人生航路105
・世界の法則108
・古代の人間109
アジア──非悲劇的な人間110
・インド110
・中国111
・原始的な観念論112
悲劇の英雄114
・ギルガメッシュ114
・アッティカ悲劇115
・プシュケー118
美の基本諸概念──内容120
孤独な人間122

移行125
回顧──諸要素のカオス125
・ひそかな〈もし~ならば〉126
・公然たる〈もしかすると〉127
・支配的な〈だれが知ろう〉130
展望──主の世界日131
・運動131
・変化132
・配列134
・帰結135

    第2巻 軌道、あるいはつねに更新される世界

序論 奇跡を体験する可能性について 141
信仰について141
奇跡の神学142
・信じられた奇跡142
・証明された奇跡146
三つの啓蒙148
歴史的世界観150
・シュライアーマッハー152
・歴史神学152
・世紀の転換期154
・課題155
新たな合理主義156
哲学と神学157
・古い哲学157
・特定の立場に立つ哲学者158
・新たな哲学者160
神学と哲学160
・古い神学160
・体験の神学者162
・新しい神学者162
文法とことば164
・瞬間167

第1章 創造、あるいは事物の永続的な根拠169
創造主170
・力170
・恣意と必然172
イスラーム──理性の宗教176
被造物179
・無179
・摂理と物理存在181
イスラーム──必然性の宗教185
ロゴスの文法(認識の言語)188
・数学の限界188
・文法の法則190
・基幹語191
・属性193
・事物性193
・個別性194
・対象性195
・現実性196
・できごと197
・関係性197
・即物性198
・完成態198
創造の論理199
・あることと創造されてあること199
・科学的な世界像200
・創造された世界201
観念論の論理203
・産出204
・流出206
・「自我」と「事物」208
・理念の論理にたいする創造の論理209
観念論的なメタ自然学[形而上学]212
・言語にさからう思考213
・事物からの逃走214
・観念論の倫理(エートス)215
・観念論の宗教216
・対象としての神217
・崩壊218
芸術の理論220
・観念論者と言語220
・観念論の美学221
・言語としての芸術223
・天才225
・作家と芸術家225
神のことば226
・『創世記』第一章の文法的分析
・奇跡の予言235

第2章 啓示、あるいはつねに更新される魂の誕生237
啓示者238
・隠れた者238
・あらわな者240
・愛242
・愛する男246
・現在247
イスラーム──人間性の宗教250
魂253
・反抗253
・謙虚255
・愛されているもの256
・誠実258
イスラーム──行為の宗教260
エロスの文法(愛の文法)
・基幹語
・対話(ダイアローグ)形式264
・モノローグ265
・問い266
・呼びかけ266
・聞くこと268
・命令268
・現在270
・啓示270
・受けとること271
・恥ずかしさ272
・和解274
・告白276
・認識278
・根拠279
・願い281
・叫び282
啓示の論理283
・文法的な補遺286
・固有名詞284
芸術の理論(承前)287
・新たなカテゴリー287
・芸術と芸術家289
・美的カテゴリーとしての啓示292
・作品292
・芸術家294
・叙事的295
・叙情的297
・造形芸術と音楽芸術297
・造形芸術──創造的まなざし298
・造形芸術──形式の問題299
・リズム301
・ハーモニー302
神のことば303
・『雅歌』303
・『雅歌』の文法的分析307
・奇跡の公開312

第3章 救済、あるいは御国の永遠の未来315
愛の行為316
・閉じこもっていた者316
・古代悲劇317
・神秘家318
・開示320
・近代悲劇321
・神の僕(しもべ)325
・隣人愛328
・命令と自由329
・世界における愛330
イスラーム──義務の宗教330
御国(Das Reich)
・隣人334
・未完の世界335
・生成する世界336
・魔法をかけられた世界337
・脱魔術化338
・本質化340
・生きているもの341
・御国の成長343
・不死性344
イスラーム──進歩の宗教345
パトスの文法(行為の言語)349
・成長と働きかけ349
・方法について351
・基幹文354
・合唱形式354
・要請356
・集うこと357
・承認358
・先取り360
・隣人360
・行為361
・現実化362
・目標363
・境界364
・決定365
・終わり366
救済の論理366
・〈一にしてすべて〉366
・神の国と世俗の国367
・隣人と〈自己〉368
・魂と世界369
・制度と革命371
・終わりにして始まり372
芸術の理論(結び)373
・美的カテゴリーとしての救済373
・芸術における公衆374
・芸術における人間376
・作品における「劇的なもの」377
・さまざまな芸術のなかの文学377
・造形芸術における形態379
・音楽におけるメロス379
・詩の響き380
・作家の言語381
・文学における理念381
・生の芸術的内実382
・まとめ383
・願望384
神のことば384
・『詩篇』の言語385
・『詩篇』第一一五章の文法的分析387
・奇跡の永遠化391

敷居393
回想──軌道の配列393
・新たな統一体393
・新たな全体性394
・新たな関係395
・新たな連関396
・新たな配列396
・前世界にたいする関係398
展望──永遠という神の日399
・ただひとつの永遠399
・永遠の神399
・人間における永遠なるもの401
・世界の永遠化402
・永遠におけるさまざまな時間403

    第3巻 形態、あるいは永遠の超世界

序論 御国を祈りによって手に入れる可能性について409
試すということについて409
御国の強制412
・行為と祈り413
・人間的な世界秩序と神的な世界秩序414
・愛の行為と目的をもった行為415
・隣人ともっとも遠いひと418
・祈りの魔力419
・天国の僭主たち419
しかるべき時
・神の時間421
・この世の時間421
・罪びとの祈り422
・狂言者の祈り425
ゲーテの生涯426
・祈る者426
・各自の運命427
・ミクロコスモス428
・ただひとりのキリスト教徒429
キリストのまねび431
・古代世界431
・ペテロの教会432
・中世の二重真理の世界433
・近代的人間435
・パウロの諸世紀435
・引き裂かれた現実のうちにある近代的な生436
・未来のキリスト教437
ゲーテと未来438
・不信仰者の祈り438
・希望439
・ヨハネ的な完成441
・ゲーテとニーチェ443
・革命444
・宣教445
・ゲーテの限界446
・〈きょう〉447
正しい祈り448
・しかるべき時448
・永遠の瞬間448
・時機449
・もろもろの時代の循環450
・週452
・祭式453
・御国近さ454
・ひとつになった祈り455
典礼学と所作456
・真理459

第1章 火、あるいは永遠の生 462
永遠性の約束462
永遠の民族──ユダヤ的運命463
・血縁と精神463
・諸民族とその故郷の土地464
・聖地465
・諸民族とその故郷の言語466
・聖なる言語467
・諸民族とその生の掟469
・聖なる掟470
・運命と永遠性472
唯一の民族──ユダヤ的本質473
・個性と普遍性473
・対極性475
・ユダヤ的神476
・ユダヤ的人間477
・ユダヤ的世界479
・本質についての問い
聖なる民族──ユダヤ的一年
・民衆の社会学──聞くこと
・安息日483
・創造の祝祭484
・金曜日の夕べ485
・安息日の朝486
・安息日の午後487
・安息日の終わり488
・休息489
・完成490
・共同体の社会学──食事491
・啓示の祝祭493
・解放の祝祭494
・啓示の祝祭498
・仮庵祭499
・全体の社会学──挨拶502
・救済の祝祭505
・裁き507
・罪508
・死と生509
・贖罪511
・一年への帰路313
世俗の諸民族──メシアニズム的政治513
・目標に到達している民族513
・諸民族と世界514
・諸民族と戦争515
・選ばれた諸民族516
・宗教戦争517
・世界平和518
・民族と国家519
・国家における法520
・国家における暴力521
・戦争と革命522
約束の永遠性524

第2章 光線、あるいは永遠の道 526
実現の永遠性526
時間を通る道──キリスト教的な歴史527
・エポック528
・西暦530
・全キリスト教徒533
・信仰535
・教会536
・キリスト538
・キリスト教の行為541
・ユダヤ教の行為542
・十字架と星544
二つの道──キリスト教の本質545
・子と父548
・聖職者と聖人550
・国家と教会551
魂の浄化──宗教的一年554
・造形芸術の社会学──教会堂555
・ことばの秘蹟560
・日曜日──創造の祝祭561
・音響芸術の社会学──教会音楽563
・食事の秘蹟568
・啓示の祝祭──クリスマス、復活祭、聖霊降臨祭569
・救済の祝祭574
・世俗の祝祭577
・教会と世俗暦578
・描写芸術の社会学──民衆劇580
・洗礼の秘蹟583
心情の内なる天──キリスト教美学506
・世界と魂586
・世俗の子と神の子586
・年齢587
・受難の形態化588
・芸術と十字架590
・魂と世界591
永遠性の現実化592

第3章 星、あるいは永遠の真理596
真理の永遠性596
神(神学)598
・あらわなもの598
・隠れたもの598
・最初のひと599
・最後のひと601
・〈ただひとりの方〉603
・主604
真理(宇宙論)606
・神と真理606
・現実性と真理607
・真理にかんする真理問題607
・真理の事実608
・真理への信頼608
・真理と神610
・真理の門にて612
・真理の経験613
・真理の目的地にて614
精神(心理学(Psycho=Logic)[=魂の論理学])617
・真理において617
・真理の所有618
・真理の証明619
・真理の場所と時間620
・真理の体験621
・人間の限界622
・人間性の形態──ユダヤ人623
・人間性の形態──キリスト教徒624
・人間性の法──誕生と復活625
真であることの証明がとる形態──終末・論626
・キリスト教の道627
・精神化された神628
・神にされた人間629
・神格化された世界631
・キリスト教の三つの危険632
・ユダヤ的生634
・民族の神634
・選ばれた人間636
・法の世界638
・ユダヤ的な危険640
・三つの危険の安全性641
・最高のものの秘密のうちにあるユダヤ的生活642
・馬車の物語643
・シェキーナーの放浪の旅645
・神の統一647
・四終にかんするキリスト教の教説648
真であることの証明の法──神学651
・不和の意味651
・二つの契約653
・キリスト教徒の永遠のユダヤ人憎悪654
・真であることの証明がもつ意味656
・永遠の真理658

門 661
回顧──形態の顔661
・神の顔661
・神の日662
・神の時間664
・永遠の神々665
・神々のなかの神666
・人間の顔668
展望──生の日常669
・最後のもの669
・最初のもの670

訳者あとがき 673
事項索引 v
人名索引 i

https://www.msz.co.jp/book/detail/07459/ 救済の星 目次




https://www.msz.co.jp/book/detail/07459/



師のヘルマン・コーヘンはカント寄りだがローゼンツヴァイク自身はヘーゲル寄り。
デリダの近刊本にシオニズムではないユダヤ教と書いてあったので読んでみたがこれならゾンバルトを読むべきだ。
シオニズムは救世主出現前に一箇所に集まるので敵に攻撃されやすく正統派ユダヤからは間違いだとされる。
ただそれだけのことだ。深刻な形而上学は必要ない。ゾンバルトの信用経済学理解は必須だが。
ただしそのヘーゲル譲りの哲学体系はそれでも興味深い。国土を必要としない神学・哲学体系ということか。


各巻巻頭の記号:
①△
②▽
③✡️

               /\
              /_門\
             星、永遠の真理
            /__\/__\
           /\③形態、あるいは
          /__永遠の超世界__\   
御国を     火、永遠の生\  /光線、永遠の道
祈りで得る可能性/__\/__\/__\/__\
       /\              /\
      /_移動  ローゼンツヴァイク /_敷居
     人間、メタ=   救済の星   /救済、未来
    /__倫理学_\        /__\/__\
   /①要素、あるいは\      /②軌道、あるいは\
  /__永続的な前世界_\    /つねに更新される世界\
 /神、メタ=  世界、メタ=  /創造、根拠  /啓示、誕生
/__自然学_\/__論理学_\/__\/__\/__\/__\
すべてを認識          奇跡を体験
 する可能性          する可能性

第1巻 要素、あるいは永続的な前世界
序論 〈すべて〉を認識する可能性について 3
死からの出発3
〈すべて〉の哲学6
ヘーゲル8
キルケゴール9
新しい哲学10
ショーペンハウアー10
ニーチェ12
人間13
メタ倫理的なもの14
世界15
メタ論理的なもの17
神21
メタ自然的なもの22
数学と記号27
根源29

第1章 神とその存在、あるいはメタ自然学 33
否定神学33
二つの道34
方法について35
神的自然37
根源語38
記号39
神的自由40
記号44
神の生動性44
根源語46
記号48
神話のオリンポス48
アジアーー非神話的な神50
・中国53
・原始的な無神論54
美の基本諸概念ーー外的形式55
神々の黄昏56

第2章 世界とその意味、あるいはメタ論理学 60
否定的宇宙論60
方法について61
世界的な秩序62
根源語、記号64
世界のゆたかさ65
記号67
世界の現実性68
記号73
造形的な宇宙(コスモス)76
古代の宇宙論77
プラトンとアリストテレス78
ポリス80
ひとの住む世界(オキュメネー)82
ソフィスト83
アジアーー非造形的な世界84
・インド84
・中国86
・原始的な現象主義88
美の基本諸概念ーー内的形式88
世界の眠り89

第3章 人間とその〈自己〉、あるいはメタ倫理学 92
否定的心理学92
方法について93
人間の各自性94
根源語96
記号97
人間の意志98
記号99
人間の自立性100
記号102
英雄のエートス105
・さまざまな人生航路105
・世界の法則108
・古代の人間109
アジアーー非悲劇的な人間110
・インド110
・中国111
・原始的な観念論112
悲劇の英雄114
・ギルガメッシュ114
・アッティカ悲劇115
・プシュケー118
美の基本諸概念ーー内容120
孤独な人間122

移行125
回顧ーー諸要素のカオス125
ひそかな〈もし~ならば〉126
公然たる〈もしかすると〉127
支配的な〈だれが知ろう〉130
展望ーー主の世界日131
・運動131
・変化132
・配列134
・帰結135

第2巻 軌道、あるいはつねに更新される世界
序論 奇跡を体験する可能性について 141
信仰について141
奇跡の神学142
・信じられた奇跡142
・証明された奇跡146
三つの啓蒙148
歴史的世界観150
シュライアーマッハー152
歴史神学152
世紀の転換期154
課題155
新たな合理主義156
哲学と神学157
・古い哲学157
・特定の立場に立つ哲学者158
・新たな哲学者160
神学と哲学160
・古い神学160
・体験の神学者162
・新しい神学者162
文法とことば164
瞬間167

第1章 創造、あるいは事物の永続的な根拠169
創造主170
・力170
・恣意と必然172
イスラームーー理性の宗教176
被造物179
・無179
・摂理と物理存在181
イスラームーー必然性の宗教185
ロゴスの文法(認識の言語)188
・数学の限界188
・文法の法則190
・基幹語191
・属性193
・事物性193
・個別性194
・対象性195
・現実性196
・できごと197
・関係性197
・即物性198
・完成態198
創造の論理199
・あることと創造されてあること199
・科学的な世界像200
・創造された世界201
観念論の論理203
産出204
流出206
「自我」と「事物」208
理念の論理にたいする創造の論理209
観念論的なメタ自然学[形而上学]212
言語にさからう思考213
事物からの逃走214
観念論の倫理(エートス)215
観念論の宗教216
対象としての神217
崩壊218
芸術の理論220
・観念論者と言語220
・観念論の美学221
・言語としての芸術223
・天才225
・作家と芸術家225
・神のことば226
・『創世記』第一章の文法的分析
・奇跡の予言235

第2章 啓示、あるいはつねに更新される魂の誕生237
啓示者238
・.隠れた者238
・あらわな者240
・愛242
・愛する男246
・現在247
・イスラームーー人間性の宗教250
魂253
・反抗253
・謙虚255
・愛されているもの256
・誠実258
・イスラームーー行為の宗教260
エロスの文法(愛の文法)
・基幹語
・対話(ダイアローグ)形式264
・モノローグ265
・問い266
・呼びかけ266
・聞くこと268
・命令268
・現在270
・啓示270
・受けとること271
・恥ずかしさ272
・和解274
・告白276
・認識278
・根拠279
・願い281
・叫び282
啓示の論理283
・文法的な補遺286
・固有名詞284
芸術の理論(承前)287
・新たなカテゴリー287
・芸術と芸術家289
・美的カテゴリーとしての啓示292
・作品292
・芸術家294
・叙事的295
・叙情的297
・造形芸術と音楽芸術297
・造形芸術ーー創造的まなざし298
・造形芸術ーー形式の問題299
・リズム301
・ハーモニー302
神のことば303
『雅歌』303
『雅歌』の文法的分析307
奇跡の公開312
第3章 救済、あるいは御国の永遠の未来315
愛の行為316
・閉じこもっていた者316
・古代悲劇317
・神秘家318
・開示320
・近代悲劇321
・神の僕(しもべ)325
・隣人愛328
・命令と自由329
・世界における愛330
イスラームーー義務の宗教330
御国(Das Reich)
・隣人334
・未完の世界335
・生成する世界336
・魔法をかけられた世界337
・脱魔術化338
・本質化340
・生きているもの341
・御国の成長343
・不死性344
イスラームーー進歩の宗教345
パトスの文法(行為の言語)349
成長と働きかけ349
方法について351
基幹文354
合唱形式354
要請356
集うこと357
承認358
先取り360
隣人360
行為361
現実化362
目標363
境界364
決定365
終わり366
救済の論理366
・〈一にしてすべて〉366
・神の国と世俗の国367
・隣人と〈自己〉368
・魂と世界369
・制度と革命371
・終わりにして始まり372
芸術の理論(結び)373
・美的カテゴリーとしての救済373
・芸術における公衆374
・芸術における人間376
・作品における「劇的なもの」377
・さまざまな芸術のなかの文学377
・造形芸術における形態379
・音楽におけるメロス379
・詩の響き380
・作家の言語381
・文学における理念381
・生の芸術的内実382
・まとめ383
・願望384
神のことば384
・『詩篇』の言語385
・『詩篇』第一一五章の文法的分析387
・奇跡の永遠化391

敷居393
回想ーー軌道の配列393
・新たな統一体393
・新たな全体性394
・新たな関係395
・新たな連関396
・新たな配列396
・前世界にたいする関係398
展望ーー永遠という神の日399
・ただひとつの永遠399
・永遠の神399
・人間における永遠なるもの401
・世界の永遠化402
・永遠におけるさまざまな時間403

第3巻 形態、あるいは永遠の超世界
序論 御国を祈りによって手に入れる可能性について409
試すということについて409
御国の強制412
行為と祈り413
人間的な世界秩序と神的な世界秩序414
愛の行為と目的をもった行為415
隣人ともっとも遠いひと418
祈りの魔力419
天国の僭主たち419
しかるべき時
・神の時間421
・この世の時間421
・罪びとの祈り422
・狂言者の祈り425
ゲーテの生涯426
・祈る者426
・各自の運命427
・ミクロコスモス428
・ただひとりのキリスト教徒429
キリストのまねび431
・古代世界431
・ペテロの教会432
・中世の二重真理の世界433
・近代的人間435
・パウロの諸世紀435
・引き裂かれた現実のうちにある近代的な生436
・未来のキリスト教437
ゲーテと未来438
・不信仰者の祈り438
・希望439
・ヨハネ的な完成441
・げーてとニーチェ443
・革命444
・宣教445
・ゲーテの限界446
・〈きょう〉447
正しい祈り448
・しかるべき時448
・永遠の瞬間448
・時機449
・もろもろの時代の循環450
・週452
・祭式453
・御国近さ454
・ひとつになった祈り455
・典礼学と所作456
・真理459

第1章 火、あるいは永遠の生 462
永遠性の約束462
永遠の民族ーーユダヤ的運命463
・血縁と精神463
・諸民族とその故郷の土地464
・聖地465
・諸民族とその故郷の言語466
・聖なる言語467
・諸民族とその生の掟469
・聖なる掟470
・運命と永遠性472
唯一の民族ーーユダヤ的本質473
・個性と普遍性473
・対極性475
・ユダヤ的神476
・ユダヤ的人間477
・ユダヤ的世界479
・本質についての問い
聖なる民族ーーユダヤ的一年
・民衆の社会学ーー聞くこと
・安息日483
・創造の祝祭484
・金曜日の夕べ485
・安息日の朝486
・安息日の午後487
・安息日の終わり488
・休息489
・完成490
・共同体の社会学ーー食事491
・啓示の祝祭493
・解放の祝祭494
・啓示の祝祭498
・仮庵祭499
・全体の社会学ーー挨拶502
・救済の祝祭505
・裁き507
・罪508
・死と生509
・贖罪511
・一年への帰路313
世俗の諸民族ーーメシアニズム的政治513
・目標に到達している民族513
・諸民族と世界514
・諸民族と戦争515
・選ばれた諸民族516
・宗教戦争517
・世界平和518
・民族と国家519
・国家における法520
・国家における暴力521
・戦争と革命522
約束の永遠性524

第2章 光線、あるいは永遠の道 526
実現の永遠性526
時間を通る道ーーキリスト教的な歴史527
・エポック528
・西暦530
・全キリスト教徒533
・信仰535
・教会536
・キリスト538
・キリスト教の行為541
・ユダヤ教の行為542
・十字架と星544
二つの道ーーキリスト教の本質545
・子と父548
・聖職者と聖人550
・国家と教会551
魂の浄化ーー宗教的一年554
・造形芸術の社会学ーー教会堂555
・ことばの秘蹟560
・日曜日ーー創造の祝祭561
・音響芸術の社会学ーー教会音楽563
・食事の秘蹟568
・啓示の祝祭ーークリスマス、復活祭、聖霊降臨祭569
・救済の祝祭574
・世俗の祝祭577
・教会と世俗暦578
・描写芸術の社会学ーー民衆劇580
・洗礼の秘蹟583
心情の内なる天ーーキリスト教美学506
・世界と魂586
・世俗の子と神の子586
・年齢587
・受難の形態化588
・芸術と十字架590
・魂と世界591
永遠性の現実化592

第3章 星、あるいは永遠の真理596
真理の永遠性596
神(神学)598
・あらわなもの598
・隠れたもの598
・最初のひと599
・最後のひと601
・〈ただひとりの方〉603
・主604
真理(宇宙論)606
・神と真理606
・現実性と真理607
・真理にかんする真理問題607
・真理の事実608
・真理への信頼608
・真理と神610
・真理の門にて612
・真理の経験613
・真理の目的地にて614
精神(心理学(Psycho=Logic)[=魂の論理学])617
・真理において617
・真理の所有618
・真理の証明619
・真理の場所と時間620
・真理の体験621
・人間の限界622
・人間性の形態ーーユダヤ人623
・人間性の形態ーーキリスト教徒624
・人間性の法ーー誕生と復活625
真であることの証明がとる形態ーー終末・論626
・キリスト教の道627
・精神化された神628
・神にされた人間629
・神格化された世界631
・キリスト教の三つの危険632
・ユダヤ的生634
・民族の神634
・選ばれた人間636
・法の世界638
・ユダヤ的な危険640
・三つの危険の安全性641
・最高のものの秘密のうちにあるユダヤ的生活642
・馬車の物語643
・シェキーナーの放浪の旅645
・神の統一647
・四終にかんするキリスト教の教説648
真であることの証明の法ーー神学651
・不和の意味651
・二つの契約653
・キリスト教徒の永遠のユダヤ人憎悪654
・真であることの証明がもつ意味656
・永遠の真理658

門 661
回顧ーー形態の顔661
・神の顔661
・神の日662
・神の時間664
・永遠の神々665
・神々のなかの神666
・人間の顔668
展望ーー生の日常669
・最後のもの669
・最初のもの670

訳者あとがき 673
事項索引 v
人名索引 i





第一巻
要素、あるいは永続的な前世界
序論<すべて>を認識する可能性について
第一章神とその存在、あるいはメタ自然学
第二章 世界とその意味、あるいはメタ論理学
第三章 人間とその自己)、あるいはメタ倫理学
移行

第二巻
軌道、あるいはつねに更新される世界
序論奇跡を体験する可能性について
第一章創造、あるいは事物の永続的な根拠
第二章 啓示、あるいはつねに更新される魂の誕生
第三章 救済、あるいは御国の永遠の未来
敷居

第三巻
形態、あるいは永遠の超世界
序論御国を祈りによって手に入れる可能性について
第一章火、あるいは永遠の生
第二章 光線、あるいは永遠の道
第三章星、あるいは永遠の真理

訳者あとがき
事項索引
人名索引


673
661
596
526
462
409
393
315
237
169
141
125
92
60
33
3

2026年8月12日水曜日

『果てしなきスカーレット』礼賛──ドラゴンの復讐──|yojiseki

『果てしなきスカーレット』礼賛──ドラゴンの復讐──|yojiseki

『果てしなきスカーレット』礼賛──ドラゴンの復讐──

見出し画像

‪ 『果てしなきスカーレット』評
以下の記事の改訂版です。
https://note.com/yojiseki/n/na1c9d2051031
https://note.com/yojiseki/n/n67fdbd978c1e

「──ここは、生も死も混じり合う場所。対立するものではない。時もまたしかり。ここでは過去も未来も、常に溶け合っている──」

(本作冒頭老婆・魔女のセリフより)

「くだらん奴が、くだらんという事は、くだらんものではない証拠で、つまらん奴がつまらんという事は、大変面白いという事でしょう」

(黒澤明『蝦蟇の油』1984年単行本版303頁より)

「きれいは汚い。汚いはきれい」

(『マクベス』冒頭の魔女達のセリフ)

はじめに

‪本作を最初に見た時は欠点のある野心作という印象だったが3回目を見た時傑作と判断した。劇場で計9回見た。ここまで劇場で見た映画はない。
多分『もののけ姫』以来最も重要な映画だと思う。アニメに限定せず全ての映画なかで。
その興業的な不振の理由は考えるに以下辺りだろう。

・一局推しは他局が推せない(露出過多はテレビ放送待ち組を増やした)。
・宣伝が女性客を軽視した。
・声優ファンがいつものネガキャンをした。
・批評家がハムレット、神曲を読んでないことをバレたらまずいと思った。
・真実を突きつけたので嘘っぱちな生き方(戦争追認)をしている人間が反発した。
・評価したスピリチュアル系の影響力が限定的だった(動画を参照)。

しかしこれらは作品の出来とは関係ない。むしろその表現力の高さが後述する宗教的反発を招いたと思われる。また、YouTuberの発言などを見ていると伏線を張る段階で現代人はオチを期待している。ロラン・バルトが優れた映画の特質であると述べたことのある意味の保留(『映像の修辞学』より)を現代人のほとんどが作品の欠点として捉えている。自分が描いた絵や自分の作った作品を否定されたことは誰しもあるだろう。そうした人がこの映画を見て古傷を思い出してあらゆる理論武装を用意してその古傷を隠そうとしているのかも知れない。その意味でこの映画は自分自身を許せない人間達にとっての「ネズミ取り」である。

追記:
その後擁護派には以下の大きく四派があることがわかった。
・前述の都市伝説派。
・精神分析、臨床心理学派。
・二次創作絵師派。
・影響元分析派。
都市伝説派については前出の動画を参照。
精神分析に関しては後述する神の概念が象徴的に機能しトラウマ克服に寄与するらしい。
絵師に関しては作中のスカーレットの絵を描くシーンにシンパシーを持っているようだ。
自分も属する最後の分析派は、厄介なことに否定派に転化する場合もある。
ヴァイキングを題材にし、アニメ化もされた幸村誠著のコミック『ヴィンランド・サガ』と塀、龍、剣、旅、平和への希求、ラストの光のモチーフ等が共通しているが、これらの類似を剽窃と考える向きもあるだろう(デンマークはヴァイキングと関係するから政治的な応答と受け取れなくもない。ちなみにデンマークのヴァイキングは比較的非暴力的だったという研究もある)。
シャイアン族、コマンチ族からの影響、正確にはラルフ・ネルソン(『ソルジャー・ブルー』)やコーエン兄弟(『バスターのバラード』)からの影響はネイティブ・アメリカンへの直接的言及でないため文化的掠奪と考える人もいるかも知れない。
ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』から受け継いだ「虚無」という概念も個人化されすぎたと考える人もいるだろう。
それでもハムレットと神曲をマクベスの魔女によって臨死体験の中で接着する構成は大胆不敵である。
細田守は貨幣制度に目を向けたエンデの社会的に側面を受け継いでいるし、シャイアン族虐殺事件を扱うラルフ・ネルソン『ソルジャー・ブルー』などからの影響は反米思想という枠では捉えきれない本質的な主題の継承、再興と考える。

参考:

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ソルジャー・ブルー
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ヴィンランド・サガ
(アニメより漫画版がよい)

1.ストーリー上の工夫

一見捻りのないストレートな復讐譚なのだが、そもそも本作の主人公スカーレットはハムレットと違う猪突猛進型で面食らう。原作のハムレットは狂気を装うのだからスカーレットとは真逆で腹に一物あり狂気を装い周りを騙すのだ。それだからこそハムレットは一応の復讐を果たす。原作とは関係ないことがわかって純粋に映画を楽しむためにはある程度原作を知っておいた方が逆説的にいいということになる。

本作のストーリーと参照元との違いのポイント:
①ハムレットは馬鹿のふりをして復讐を遂げるが、スカーレットは逆の性格で猪突猛進。
②神曲ではダンテの相棒は経験豊富だが本作では心許ない(スカーレットは日本人の看護師の聖(ひじり)と死者の国で偶然出会う)。
③オルフェウスの象徴である竪琴を聖は最初は全く弾けない。ギリシア神話では女が消えるが映画では男が…(後述)。

参考:
この映画で明らかにホメーロス『オデュッセイア』の冥府下りは意識されている。

《わたしは心の内で、世を去った母の霊をこの腕に抱きたいと思い、抱こうと心が逸るままに、三たび母に駈け寄ったが、三たびとも母は影か夢にも似て、わたしの手をふわりと抜けてしまう。》
ホメロス『オデュッセイア』第十一歌 冥府行 岩波文庫より

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死者の国の鎧と剣。ギリシア叙事詩(トロイア戦記)におけるアキレスの鎧を連想させる。これらは死んでからも奪い合いになったと言う意味で最後まで戦う戦士を象徴する。マクベスもその末裔か。
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作品冒頭の死者の群れにスカーレットが掴まれるシーンもおそらくホメロスを意識している。
オルフェウス教を扱ったギリシア叙事詩への参照は、源流であるオルフェウス、
楽器を弾けない聖を紹介する準備である。

《さて亡者の群に祈って願した後、羊を摑まえ穴に向けて頸を切ると、どす黒い血が流れ、世を去った亡者たちの霊が、闇の底からぞろぞろと集ってきた。》(同)

ハムレットを知らなくても楽しめるが(ハムレットは映画を見てから読めば良い)、ハムレットは知っておくと別の楽しみがより増えると思う(例えばハムレットのオフィーリアへのセリフを捩ったスカーレットの聖へのセリフ「…寺へ行け」で爆笑出来るし、ローゼンクランツとギルデンスターンの登場は出オチで面白い)。それだけの戯曲だし上演の歴史がある。

アスタ・ニールセン
女ハムレット
Asta Nielsen • Hamlet (1921/II) • Directed by Svend Gade • Zwischentitel...

Sarah Bernhardt サラ・ベルナール - ハムレット
Le Duel d'Hamlet (1900) La Société Phono Cinéma Théâtre

(細田守はインタビューでサラ・ベルナールのハムレットに言及している。)

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《[細田守]…スカーレットの中には、ハムレットとオフィーリアが混ざり合っているつもりで描こうと思いつきました。そのことをアメリカの知人に話したら、「ハムレット」を女性でやった歴史は、けっこう古いのだと資料を見せてくれて。1899年にアルフォンス・ミュシャが「ハムレット」パリ公演のポスターを描いているんだけど、その公演ではハムレットは男装の人(演じたサラ・ベルナールはそれまではオフィーリアを演じていた)という設定だったそうです。…》

『果てしなきスカーレット オフィシャルガイドブック』より

アメリカの知人とは映画評論家のチャールズ・ソロモン(エンドロールに名前がある)だろう。
本作以外ではイーサン・ホーク主演のハムレット2000が低予算映画だがおすすめ。
https://vt.tiktok.com/ZSHQxu7qV/
(「ネズミ取り」は芝居ではなくて映画上映で表現される!)
テクノロジーに依拠した現代アニメの歴史より演劇の歴史は古いし、数々の芸術家を刺激してきた(かつてのグローブ座ではマイクなしに群衆に対峙してきたし、それはラストのスカーレットも同じだ。テクノロジーの発達した今見習う点は多い)。
ハムレットについては特にタルコフスキー 『映像のポエジア』が参考になる。

《…私は物質的なルーチンワークに敵対しようとしている人間のエネルギーに引きつけられる。ここで私のもっとも新しい構想の糸玉が巻かれるのである。
 このような観点から私にとって興味深いのは、シェイクスピアの『ハムレット』である。『ハムレット』を私は、いずれ、映画にしたいと思っている。このもっとも偉大な劇のなかには、最高度の精神的レベルにありながら、同時に低劣で汚れた現実との相互関係のなかに入っていくことを余儀無くされた人間についての、永遠の問題が考察されている。これは、もし未来の人間が自分の過去のなかで生きることを余儀無くされたとするならばどうなるか、というような問題を抱えている。ハムレットの悲劇も、私の考えによれば、ハムレットが破滅するということのなかにではなく、ハムレットが死を前にして自分の精神的欲求を放棄し、普通の殺人者にならなければならないということのなかにある。このような変節のあとでは、死は彼にとって至福の出口と言えるのである。あのように決闘で死ななかったならば、ハムレットは自殺することで自分の生命を絶たなければならなかっただろう。》

タルコフスキー 『映像のポエジア』単行本版310頁、文庫版336~337頁より

この正確なハムレット評は実は本作ではスカーレットにではなく聖の運命に当てはまる。スカーレットにはオフィーリア的要素が映画では重ねられる。
本作でto be or not to beを男女の二人の主人公に振り分けた(小説版*がわかりやすい)のはハムレット読解として面白い。

(「生きるべき(to be)じゃない……。復讐に取り憑かれていた私が死ぬべき(not to be)なんだ……」)

最後のスカーレットと聖の別れのシーンで、オルフェウスの冥界下りの神話と男女を逆にしたものでもあるし、見つめるという行為も神話と逆だ(そこに至る過程でもスカーレットと聖の関係性は相互に立場が入れ替わる描写がいくつかなされる)。

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*(渋谷のダンスシーンに関しては、もう一人の主人公・聖(ひじり)は渋谷の集中治療室で死ぬのでそれを加味して解釈して欲しい。最初の病院のシーンで「祝祭のうた」がかすかに聞こえている。)

一番重要なのは相互に命を救っていることだ(⑤70,⑧129)。
なお中島敦の『名人伝』(及び荘子、列子)を想起させる聖の非戦的セリフ(「中国の故事にある、究極の弓の名人は…形のない弓で見えない矢を放つ」)とそれに対するスカーレットの反応も最後の復讐の機会を前にしたスカーレットの選択((13)241)と対比的に関係してくる。
#43(⑧121~122)
https://youtube.com/shorts/mRXeS6dhDmE
作品全体も非戦的立場を取るが同時に個々の戦士の誇りを描いている点でこの映画にあるのは単なる平和主義ではない。

(ちなみに金子修介監督が本作のキャラクターの目の動きに着目していたが、主人公二人のうちどちらが生きているかを判断するシーンでの黒目の動きが効果的だった。これはCGというかデジタルで試行錯誤した成果だろう。https://x.com/shusukekaneko/status/1995033217213272372?s=61

神曲にしても一番重要なフレーズを死者の国で知り合う聖に読ませる点で、おやっと思う。死後の世界の三層構造は辺獄ということで一元化して描かれる。とは言え途中の悪夢ではダンテに依拠した神曲の構造が背景に描かれる。

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:CG制作の裏側|『果てしなきスカーレット』若手クリエイターインタビュー④ アニメ美術に挑戦した背景表現|DF TALK
https://note.com/dftalk/n/nf5607e2d8a80

Culture Crave 🍿さんによるXでのポスト

Sony Pictures Classics’ new anime 'Scarlet' is now out on digital

• Directed and written by Oscar nominee Mamoru Hosoda

• Certified Fresh on Rotten Tomatoes pic.twitter.com/8fC1Aq7m26

— Culture Crave 🍿 (@CultureCrave) March 17, 2026

#47(⑨149~153)
https://youtube.com/shorts/Afbq8lXAprw

これは恐怖の明確化という点で、不安を意味ありげに提示するだけのジャパニーズホラーには到達できなかったシーンだ。冒頭の老婆の「──ここは、生も死も混じり合う場所。対立するものではない。時もまたしかり。ここでは過去も未来も、常に溶け合っている──」というセリフも聖が星を見るシーンと並んで的確に表現されている。水面自体はラストの鏡像の扉の描写につながる。

地獄の構造はダンテ自身が明示したものだが以下の絵画なども参考にしたのだろう。

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「地獄図(地獄の見取り図)」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

ちなみに『神曲』の構造はダンテがイスラム文化から学んだものだという説がある*。


ダンテ『神曲』とイスラム文化:メモ再掲
http://nam-students.blogspot.jp/2013/04/blog-post_21.html
https://note.com/yojiseki/n/n7efb59990c8a

本作は以下のように古典を自由自在に換骨奪胎している。復讐の敵役はハムレットではなくマクベスからセリフ(「…私の心はサソリでいっぱいだ…」)が取られる(そもそも本作は冒頭のセリフを発するマクベス由来の老婆・魔女がハムレットと神曲を繋いでいる)。

ギリシア神話で有名な冥界を旅するオルフェウスは竪琴の名手だが聖は苦労してリュートを上達する。
復讐を果たすのも主人公スカーレットではなくドラゴンという結末である。

(ドラゴンについて追記しておくと、一般に人智を超えた龍は東洋的なイメージだが、本作のドラゴンは剣や武器で傷ついており西洋的な退治可能な対象でもあるとわかる。東洋の龍と西洋のドラゴンの融合だ。本作は剣でドラゴンを傷つけたであろう人間への復讐をドラゴンが果たすことで終わる。スカーレットではなくドラゴンの復讐というのがこの映画の基本プロットなのだ。ドラゴンによる雷鳴はCGを駆使したものだが一部リミテッドアニメの手法をドラゴンの描写に使っている。スカーレットが負傷した場面で空にいる十字状のドラゴンが反時計回りに断片的に描かれ、時間経過と医療経過の沈静化がシンプルに示唆される。)

このようにストレートなストーリーが実は観客に対する裏切り、挑戦となっているのが本作の物語的特徴である。

視覚的にはコンピューターを使用して手描きアニメとの融合が図られる。
ScreenXではそれが圧倒的な成功を収めていた。

映画『#果てしなきスカーレット

12/13(土)より、
❺種類のラージフォーマットでの上映が開始✨

物語の舞台である ≪死者の国≫ の世界に没入し
スカーレットの復讐の旅を体感してください!

\ "SCREENX" で見る予告編はこちら / pic.twitter.com/Jb41qdGzvW

— スタジオ地図 (@studio_chizu) December 12, 2025

CGの活用は特筆すべきだ。生と死という抽象的概念ばかりではなく、ダンスや格闘や楽器演奏を含む身体表現が(リスペクトされつつ)テクノロジーと融合している。

スタントアクターの証言:

『2001年宇宙の旅』を思わせる視覚効果は厳密には本作のそれはデザイン的に少し異なる。光学的に露光を制御した前者の場合は一本の線状に光線が収束しているが、本作は完全なCGを使用し一点を消失点にしている。

2001: A Space Odyssey "Star Gate" sequence
https://youtu.be/ou6JNQwPWE0

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『果てしなきスカーレット』【劇中歌「祝祭のうた」 スペシャルムービー】11月21日(金)公開 https://youtu.be/vOPY3hEYM4Y

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消失点が印象的なショットは終盤でも出てくる。唾を吐きかけられたスカーレットを癒すかのように雨粒が一滴空から落ちるが、その見た目のショットが同じような消失点を示している。

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雨粒のぶつかる一瞬のエフェクトはCGかも知れないが、自然界を観察した場合には奇跡の表現には必ずしも特殊効果を必要としない(むしろテクノロジーは邪魔かも知れないとさえクライマックスの影絵への遡行を見て思う)。

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2.歴史的題材の面白さ

ここで指摘したいのは後半の歴史を扱ったストーリー描写で、上の物語紹介とは違い、若干の解説がある方が確実に新たな楽しみを得られると思うので記したい。
まず敵役のクローディアスはマクベスからモーセに役割が変更する。トランプの塀を連想させるが基本的には旧約聖書が参照される。クローディアスの城も、バベルの塔を連想させるし小説版ではそう明示される(見果てぬ場所という言葉は約束の地という旧約聖書の世界を容易に連想させるが、それでもなるべく明示的にならないように配慮した絶妙な用語だ)。

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シェークスピアはハムレットでレビラート婚を批判していると読めるし、ベニスの商人と繋げればユダヤに批判的ということになる。映画は辺獄でキリスト以前のユダヤ教のイメージを使うことでこのシェークスピアの政治的歪みを修正している。みんなモーセの頃を思い出して仲良くやろうよ、ということだ(作品を通じてクローディアスは大審問官的でスカーレットはアリョーシャ的だがこの類推はまた別の話になる)。
ヴォルティマンドの要塞も中東のペトラ遺跡を参照していると公式ガイドブックにある。

(ちなみにペトラ遺跡はインディ・ジョーンズシリーズでも使われ、アガサ・クリスティの小説『死との約束』でも舞台で使われていた。『死との約束』のドラマ化、映画化の際は撮影許可の問題か別の場所に舞台が変更されるのが残念だ。旧約聖書の世界を追体験するにはうってつけの場所なのだろうが。https://x.com/studio_chizu/status/2015635836302426490?s=58

群衆は東の太陽の出る方角を目指す。
途中夕陽も描かれるから紛らわしいが基本的にエクソダスは画面上右から左への移動として描かれるので分かりやすい(ScreenX版が圧倒的成功を収めている所以である)。
東を目指すのは日ユ同祖論的イメージだ。
途中廃墟の教会の床に絵がされたモザイクの地図はシナイ山と太陽が一つに描かれる。これはモデルとなるマダバ地図を独自に改変したものだ。

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マダバ地図(ヨルダン)

太陽のモチーフは鳥のモチーフと共に本作で重要だ*。
スカーレット自身が空に昇る際、太陽に重なるように昇ってゆくのも偶然ではない。

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スカーレットが目覚めた時に見える天蓋の装飾もヘロデ門(現イシュタル門に現存)の太陽を思わせる。

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(トリミング済み)
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現イシュタル門(古代ヘロデ門が残っている)
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十六弁菊花紋

都市伝説的には十六弁菊花紋と比べられるデザインだ。
(上記はシュメール的なものと言える。カフカの短編『掟の門』を想起させる大いなる門などはユダヤ的ではあるが明示はされない。むしろ鳥達をとまらせて神道的イメージを使わずに鳥居を表現している。)


本稿では太陽の象徴的意味を強調したが無論太陽の光は当時の農業生産に関わる重大事だと最新の研究でわかっている。小説版では1600年の火山噴火による気候変動も言及される。

 窓の外に小雪が舞う、静かな冬の日。  
 スカーレットは、寒い宿舎の中で、静かに書き物をしていた。扉の隙間に一通の手紙が差し込まれる。筆を置き、立ち上がって手紙を手に取った。エルシノア城の従者からの報告だった。
『穀物危機で多くの民が飢饉の淵に立たされています。にもかかわらず、クローディアス王は何もしようとしません。その上……』  
 彼女の顔から、血の気が引いていく。
「……!」  
 居ても立ってもいられず、マントを摑むと部屋を飛び出した。  
 この時期、「小氷期」と呼ばれる14世紀から続く地球の寒冷化の最中にあった。  
 加えて1600年、ペルーのワイナプチナ火山が爆発し、大量の二酸化硫黄が大気中に放出された。その影響で、太陽光が遮られ、世界全体の気温が顕著に低下した。  
 翌年から、ヨーロッパ各地で冷害や霜害が頻発することになる。農作物の生育期が短縮され、収穫量が目に見えて減少した。大麦、ライ麦の収穫に失敗し、ワインの生産は壊滅的だった。穀物不足に伴い、食料品の価格が急騰したことが、社会的な不安を増大させ、一部地域では暴動や反乱が発生した。  
 この寒冷化はデンマークも逃れることはできず、農業が深刻な打撃を受けた。それのみならず、周辺の海域や湖沼が一部凍結し、海運にも大きな影響が出ていた。
 人々の生活が危機に瀕している。一刻も早く対策を講じる必要があった。

角川文庫『果てしなきスカーレット』37~38頁

参考:
大噴火が引き起こした地球寒冷化と社会不安 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/24/
Global Impacts of the 1600 Eruption of Peru's Huaynaputina Volcano
Kenneth L. Verosub, Jake Lippman
First published: 03 June 2011
https://doi.org/10.1029/2008EO150001Digital

何より気になるモチーフは王冠である。

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これは私見ではローマ帝国と交流があったと噂される古代新羅の王冠に似ている。
つまりデンマークやイングランドの王冠の歴史的資料をあえて無視していることになる。古代新羅の王冠は樹木を模ったとされるが一部ではメノラーを想起させると言われている(本作では正面からの王冠のルックはメノラーとの類推を避けたデザインになっている。ただし上部が見切れた正面のショットだとやはりメノラーに見えるという高度なテクニックを使っている。アムレットがプロテスタント、クローディアスがカトリック、それを受け継いだスカーレットはプロテスタント的ではあるが、彼らが冠る王冠は一貫してユダヤ教への回帰を秘めているという見方も可能かもしれない。特にプロテスタントはユダヤ教への回帰の側面があると言われる*)。

《…また、わたしは慧眼なハインリッヒ・ハイネが、ピューリタニズムとユダヤ教との間の親近性をかなり以前に洞察していたことを想起したいと思う。 「プロテスタントのスコットランド人は」と彼は『告白』のなかでたずねる。「ユダヤ人ではないのか? 彼らの名前は、いたるところで聖書からとられているし、その上信心深そうな言葉は、どこかエルサレム的パリサイ人的だし、宗教もブタ肉を食べてもよいというだけのユダヤ教ではなかろうか?」  
 ピューリタニズムはユダヤ教である。》

(ヴェルナー・ゾンバルト著『ユダヤ人と経済生活』第11章第7節単行本邦訳129頁より)

こうした歴史的モチーフはストーリー描写の背景にアレゴリカルに配置され、歴史に興味ある人間には刺激的である。
(小説版では歴史上の武器が紹介されさらに興味深い。ちなみに映画でもキーワードになる「ゆるし」という日本語は縄文由来の言葉らしい。紐を縛る、緩めると言う時の「ゆるめる」が語源だという。

https://vt.tiktok.com/ZSHApuA1e/

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ゆるしの語源

「神社年鑑」編集長・水間一太朗
TOLAND VLOG チャンネルより
すべての日本人は見てください。明治時代に封印された〝神道の真実〟を開示します。
https://youtu.be/gTvEIX6JEb4
日本人は人類救済の鍵だった!?これから起こる世界の大変革の理由がヤバすぎた…
https://youtu.be/lM2G1YdQ9P4

これらは証明のしようがないが結縄が普及していたのは確かだろう。結縄はインカ帝国のキープが有名。沖縄にも藁算が残る。市場のシーンで少女がスカーレットにスカーフを巻いて結ぶのも約束という意味合いが感じ取れる。信用貨幣の原点に結ぶという行為があり、緩める、許すという行為もその一環に位置付けられる。さらに小説版で明らかになるが細田守は市場で共通通貨、共通言語が生成されると考えているようだ。旧約聖書ではバベルの塔が崩壊して複数言語に分かれるからバベルの塔の完成は共通言語の形成につながるという考え方もあり得る。)

音楽について言えば、世界音楽というジャンルを個々の差異を解消することなく打ち立てている点で画期的だと思う。普遍宗教というものが自らの宗教を普遍的だとする勘違いの危険を孕んでいるように、世界音楽なる言葉は同じ危険を孕むが、この映画はそうした勘違いを自戒するようなストッパーが製作者のインタビュー及び作風の選択から感じられる。
例えば渋谷の音楽はサンバではないと言う。一般化したリズムを使用しているというのだろう。ハワイアンや古楽の使用からは流行から身を引く姿勢、その音楽独自の歴史を重視する姿勢を感じる。
これ以上の分析には細かい作業が必要だが本作の音楽は超越的な世界音楽なるものが存在しないことを自覚するが故に結果的に自らが世界音楽を体現している。

3.倫理的、宗教的課題

ただし本作の魅力はこうした要素を上回る宗教的とも言える倫理的使命感にある。この宗教性は日本の一部の観客を激怒させ、反発させたものだ。

「君が私たちの無事を、神様に願ってくれたおかげさ」

冒頭部分のアムレット王のこんな小さなセリフでさえ宗教的構造は複雑だ。
願いをアニミズム的に作用させるのではなく神というワンクッションをわざわざ介在させる論理は日本の観客には理解し難いだろう。呪術と宗教の違いは以下の図解が参考になる。

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岸本英夫『宗教学』50頁より

昨今のアニメーションブームには文字通り思考回路に呪術的アニマを復活させるという退行的な側面があるということは自戒を込めて追記しておきたい。テクノロジーを駆使すれば駆使するほどブラックボックス化の恐れは大きくなるので退行が進む危険がある。
(ブラックボックス化解決のヒントは先のセリフは父と娘のスキンシップを描くなかで発せられるということにある。テクノロジーを背景にして流行する退行を防ぐのはむしろ単純なスキンシップかも知れない。スカーレットが経験した絵画教育もそうした観点で捉え直すことは有益だろう。本作のキャラクターデザインはCGを導入しながらも3Dではなくあえて2D、つまりスカーレットが劇中で描いた絵の延長上にある。我々の手に届くところにキャラクターデザインを置いている。)
さらに宗教的反発については以下の言葉が正確だ。

“Whatever is truthful haunts you and don't let you sleep at night. Especially anybody who's living a lie gets hurt. You get a lot of ugly reactions from people not familiar with it. …
…Make something religious and people don't have to deal with it, they can say it's irrelevant. …There does come a time, though, when you have to face facts and the truth is true whether you wanna believe it or not, it doesn't need you to make it true... ”

Bob Dylan“Biograph” liner notes (1985)

《真実であるものは何であれ、人の心に付きまとい、 眠れなくなってしまう。 特にうそっぱちな生き方をしている者たちは、真理を聞かされると傷つくんだ。 そこでいろんな険悪な反応が返ってくるんだ。…
…なにか宗教的なものに対しては、 人は面と向かわないで、関係ないよと言わんばかりの顔をする。 ‬…だけど、 事実に直面しなければならない時が来るし、 信じたくても、 信じたくなくても真理は真理であるという時が必ず来る。》

‪(ボブ・ディラン『バイオグラフ』旧版ブックレット38,94頁より)

柄谷行人の用語で言えばこの映画は交換様式Dを目指している。柄谷行人は共同体(交換様式A)の高次元の回復を説くが、この映画ではキャラバンと市場のシーンが主人公二人を高次元に高める。詳細は別稿に譲るが交換様式Aは交換様式BCを経てDに至る(市場のシーンがCに当たる)。それは恋愛感情を含めてだ…ただしスカーレットの獲得する愛は愛する人との永遠の別れと引き換えである。

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『果てしなきスカーレット』交換様式仮説
単純に場面では分類出来ないが逆に登場人物では綺麗に分類出来る。
(スカーレットはAから反時計回りで移行し、最終的に聖のDに気づく。)

(キャラバンは原遊動性Uであり通常はA以前に区分されるが全体として多面性を持つ。長はA、排他的旅人はB、楽器を渡す女性はC。クローディアスは御恩と奉公で戦士達に命令するが大いなる門は官僚的で開かない。これはBである。柄谷行人は本作がスカーレットのモデルにしたエリザベス一世の救貧法について国家=交換様式Bを強化するものとして批判的だ。)

ちなみにDは協同組合を指すという説もあるし、平等な事業組合という考え方もある。

 《細田守監督がオリジナルアニメーション映画を継続して作り続けることができた背景には、製作・プロデュース面においても協力企業や出資者などの理解を促しアライアンスを組むに留まらず、先駆的なLLP(有限責任事業組合)といった仕組みでの権利保有や利活用の新しい取り組みを推進したこと…があります。》

『スタジオ地図15周年『果てしなきスカーレット』で挑む世界』日経エンタテインメント!3頁

細かい技術的なことを言えば聖とスカーレットの別れのシーンの音楽が再び使われて歌詞が付け加わりエンドロールになる。愛する人の喪失は歌の獲得として表現される…。
(フロイトの超自我は柄谷行人によれば交換様式Aに位置付けられるが本作の「許せ」という言葉はまさしく超自我=交換様式Aの高次元の回復であり交換様式Dへの鍵である。だたし「許せ」から「生きたい」に超自我は上書きされる。)
この作品はある一定の精神的危機を乗り越えた際には指標となるであろう芸術作品特有のスキャンダラスな典型的反応を周囲にもたらした。
細田守は一歩一歩前進し宮崎駿を乗り越えた。(『時をかける少女』へのオマージュを含みつつも)ナルシスティックは空中浮揚感を排除した、スカーレットが透明な階段を登るシーンを見て自分はそう確信した。

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大部分の観客はそれに気づいていないが、『果てしなきスカーレット』は傑作としてこれからの新たな観客に開かれて残る。

補足:
死者の国の風景を大脳のメタファーと解釈する人もいる。

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[2:55頃]
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[同じカットが1:20:00頃再登場する]

(魔女はマクベスから取られたが、大友克洋のキャラに似ている。これは『もののけ姫』で宮崎駿がシシガミの最後の表情を手塚治虫風にしたのを連想させる。超越的なものを形にする知恵、その方法論それ自体を受け継いでいる点で細田は他のジブリ模倣者と一線を画す。)

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追記(群衆と鳥):

最後に鳥のモチーフについても追記しておきたい。
スイミー的なオチは劇場によって捉え方が変わる。特に鳥の声の分離は劇場差が大きい。
虚無の在り方も我々次第ということだ。ここは一部海外批評家から仏教的と評されたものだ。

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補註:
仏教関連で言えば、冒頭の積み石もしくは石塔も仏教を連想させる(アニメファンは『君たちはどう生きるか』のラストを連想するかも知れない)。
空也上人その他の作に擬せられる室町期に源を持つ『西院川原地蔵和讃』にはこうある。

あまり心の悲しさに
石を集めて塔を組む
一重積んでは父をよび
二重積んでは母恋し
(速水侑著『地蔵信仰』153,154頁) 

また、『法華経』にはこうある。

《仏が入滅したのち、その舎利(遺骨)を供養する者は多く塔を起て、種々の宝玉をもって清らかに飾り、仏に祈りと敬いをささげなさい。…子どもが砂遊びでつくった塔のようであっても、それでよいのです。》
「方便品」『全品現代語訳法華経』(角川ソフィア文庫より)

《賽の河原とは何か。古く天野信景は、貞観年間(九世紀)に百姓送葬の地と定められた佐比の河原の転訛であろうとした。また山東京伝は、佐比の河原に子供が石を積むというのは、『法華経』方便品に、「童子戯れに沙を聚めて仏塔を為る。かくのごとき諸人ら、みなすでに仏道を成す」とあるのによったものとした。》
(速水156頁)

乃至童子戲。聚沙為仏塔。
如是諸人等。皆已成仏道。
(妙法蓮華経方便品 第二)

仏教とは違って道祖信仰に由来があるという柳田國男の説(同156頁)もある。五輪塔の模倣という説は捨て切れないが旧約聖書や神道には自然石を重視する考え方ある。

ちなみに積み石は地獄の三途の川を描く際の定番。中川信夫『地獄』(1960)、神代辰巳『地獄』(1979)でも描いている。
本作は中川信夫版のイメージに近いが、仏教的イメージを安易に使ったこうした子供騙しの失敗作と違い、細田は早急に意味を求めない。
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スカーレットと聖の出会い。聖が歌うのは地蔵和讃ではなく祝祭の歌。
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民衆の集合力の描写。『ヴィンランド・サガ』冒頭を想起させる。

ドラゴンを鳥の集合体としたことは民衆の集合力をアレゴリカルに示したもので途中描かれた群衆の悲劇とも対応する。
最後の群衆の前に立つスカーレットはチャップリンの『独裁者』を想起させる。チャップリンと違うのはスカーレットが対話を試みるという点だ。

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時にはうるさい、時には静かな群衆はスカーレットの問いかけによって対話する個々の人格を付与される。人格が付与されてはじめて群衆は民衆と呼ぶことが出来る。

《…わたしたちにとっての唯一の教師は、わたしたちに対して「私と共にやりなさい」と言う… 》

(ジル・ドゥルーズ『差異と反復』単行本49頁、文庫上74頁より)

補記:

この映画には黒澤明からの意識的、無意識的影響がある。

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秀虎「許せ」

https://youtu.be/85O6mzkKMoE
『乱』より
1:17:00
秀虎「許せ、許せ」
(この場合は秀虎が秀虎自身を許せと言っている。)


黒澤明からの影響については以下の記事も参照(著者は心理職にあると言う)

【ネタバレ】「果てしなきスカーレット」創造を通して、細田守はアニメ界の黒澤明、かつベートーヴェンになった!! -更に、ダンテ「神曲」とユング心理学的観点からの考察-(2025/12/06第2版)|阿世賀浩一郎
https://note.com/chitose1960/n/n94b422de8997

太陽が雲に隠れるシーン、伝令。これらは『乱』の影響。見上げる空も『乱』に似ている。
聖がいきなり馬に乗る…のは和平の為。これは『隠し砦』のパロディ。顔に傷を負ったヴォルティマンドは藤田進だ。
さらにガートルードの「なぜ…」というセリフ、

「なぜ夫が死んで、なぜお前が地獄に堕ちない……? なぜ……?」

これは『野良犬』『乱』にあったセリフ。確か『戦争と平和』あたりに元ネタがある。ガートルードはマクベス夫人より『乱』の楓の方に近い。
マクベス由来の魔女を3人ではなく1人にしたのも『蜘蛛巣城』と同じ。
決闘シーンは『用心棒』『椿三十郎』的。

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衣装はララランドだが…
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祭りと火 ソルジャーブルー的風景は積極的な意味を持つ。
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三船は急いで敵を殺しに行くが、
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聖は和平へ急ぐというギャグ。
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物語終盤の裏切りを予想させる登場シーン。
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座頭市!

黒澤明からの影響が明示されるとともに勝新太郎(=『座頭市』とともに『影武者』の降板事件は有名)からの影響も明示される。臨死体験(=夢オチ)の中に全てを共存させる、そうしたバランス感覚は稀有だと思う。