【相対性理論】⑧E=mc^2 の導出(相対論的質量を考慮して仕事量を積分)
ドーナツ経済学
ドーナツ経済学は、経済成長だけに注目することを避け、持続可能な未来をつくるための考え方です。2011年に、当時オックスファムの研究者だったケイト・ラワースによって考え出されました。ドーナツという誰にでもイメージしやすいデザインを用いていることが特徴です。
下がドーナツの図です。仮に、ドーナツの食べられるところ(緑の部分)を「中身」、穴の部分を「穴」、外側を「外側」と表現しましょう。「外側」には環境指標が、「穴」には社会指標が配置されていることがわかります。
ドーナツの外側
ドーナツの外側には、ストックホルムレジリエンスセンターの「プラネタリーバウンダリー(地球の境界)」の9つの分野が配置されています。この9分野で超過(行き過ぎや使いすぎ)があれば、その分野のドーナツの外側が赤色で表示されます。赤色の部分が大きければ大きいほど、超過の程度が大きいことを表します。図を見ればわかるように、現在、このうち4つの分野で超過が生じています。
ドーナツの穴
ドーナツの穴は社会面の12分野の「不足」を表しています。図1を見ると、ドーナツの中身におさまっている分野は一つもなく、すべての分野で問題が残っていることがわかります。赤い部分が中央に向かって伸びているほど、不足の程度が大きいことを示しています。
たとえば、平和と正義について赤い部分が2つに分かれています。これは「腐敗認識指数」(各国の公務員や政治家などが、賄賂などの不正行為に応じるかどうかを数値化したもの)が100点満点中50点以下の国に住む人が85%いること、人口10万人あたりの殺人発生件数が年間10件以上の国に住む人が13%いることを表現しています。
※詳しいデータは書籍『ドーナツ経済学が世界を救う』で公開されています。
ドーナツの中身におさまることを目指して
持続可能な未来をつくるためには、環境面での超過と社会面での不足をなくし、すべてをドーナツの「中身」におさめる必要があります。ドーナツの図を見ることで、GDP成長という一つの目標だけに目を向けることをさけ、総合的に考えることができるように。そんな願いからこの図はつくられています。
参考資料
ケイト・ラワース著/黒輪 篤嗣訳, 2018, 『ドーナツ経済学が世界を救う』, 河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309248486/
What on Earth is the Doughnut?...(英語)
https://www.kateraworth.com/doughnut/
地球の境界(プラネタリー・バウンダリー)2.0 (幸せ経済社会研究所のキーワード解説)
https://www.ishes.org/keywords/2015/kwd_id001823.html
ケイトラワース
ドーナツ経済学
Toshi Kurokawa
5つ星のうち5.0 「公正と環境の経済学」を提示する力作
2018年5月22日に日本でレビュー済み
力作だ。朝日新聞の書評では、これほどよくできた本とは分からなかった。題名が良くないのだと感じる。「公正と環境の経済学」とでも呼ぶべきだろう。ドーナツの形そのものが本質的ではなく、社会的な公正と公平の線と、環境を破壊しないという線の上下の線で区切られた範囲が「正しい」経済学の位置だということだ。
形ということでは、本文中でも「コンパス(羅針盤)」という表現があるが、むしろその方がメタフォーとしては適切だろう。ドーナツという食品を思い浮かべるとなんでドーナツ経済学なんだと戸惑ってしまう。
前書きで、21世紀の正しい経済学のための7つの思考法が示されて、それがそのまま本文の7章になっている。そこで、まずは目次:
経済学者になりたいのは誰か?
第1章 目標を変える―GDPからドーナツへ
第2章 全体を見る―自己完結した市場から組み込み型の経済へ
第3章 人間性を育む―合理的経済人から社会的適応人へ
第4章 システムに精通する―機械的均衡からダイナミックな複雑性へ
第5章 分配を設計する―「ふたたび成長率は上向く」から設計による分配へ
第6章 環境再生を創造する―「成長でふたたびきれいになる」から設計による環境再生的経済へ
第7章 成長にこだわらない―成長依存から成長にこだわらない社会へ
今や誰もが経済学者
付録――ドーナツとそのデータ
謝辞
訳者あとがき
著者が強調しているのは、経済学を説明するモデル、図が、経済活動や経済政策がどうあるべきかを規定するということ。だから、その考え方、立ち位置を変えることで、経済活動そのものが変わるということだ。Rethinking Economicsという、学生たちの活動が紹介されている。経済学が、いま世界が必要とすること、学生が学びたいことを扱わず、世界の不公正に加担しているという批判がこういう活動として行われている。
本書では、経済学の現在がどうしてこうなったかという説明と、これから変えるのはどこをどのようにという説明をデータとともに示しているので、結構細かいことがらまで述べられている。
第1章では、GDPがどのようにして導入されたかの経緯を含めて、その歪みを正すために公正な社会基盤を確保して、環境に対して負荷をかけないというドーナツ形の経済の枠組みを提示する。第7章でGDP成長神話がいかに問題をはらんでいるかの説明があるが、GDPだけを経済指標とすることの問題が述べられている。
第2章では、市場が問題になる。第3章の合理的経済人というモデルとも関係するが、「市場が万能」ではないことが論じられる。「マッチを擦る前と同じように、市場を始める前には注意しなくてはならない。何を燃やし尽くし、灰にしてしまうか、わたしたちにはわからないのだから。」とまとめられている。
市場に関して興味深かったのは、ボードゲーム「モノポリー」のお話。「ゲームの開発者エリザベス・マギーは、土地を人類全員の共有財産と考えるヘンリー・ジョージの思想の熱烈な支持者で、1903年に最初にこのゲームを考案したときには、二種類のまったく異なるゲームのルールを用意していた。「繁栄」と名づけられたルールでは、誰かが新しい土地を獲得するたび、すべてのプレーヤーにお金が配られ、元手がもつとも少なかったプレーヤーの資金が二倍になったところで、ゲームの決着がついた(全員が勝者だった)。いつぼう「独占者(モノポリスト)」と名づけられたルールでは、プレーヤーは自分の土地に止まったあわれなプレーヤーから地代や賃料を徴収して、お金を増やした。ゲームの勝者は、ほかのプレーヤーを全員破産させ、最後まで残ったプレーヤーだった。マギーが二種類のルールを設けたのは、「現在の土地の収奪システムからいかに尋常ではない結果や影響がもたらされるかを、プレーヤーたちに具体的に示し」、土地の所有権の扱いかたしだいで、社会にまったく異なる結果が生まれることを理解してもらいたかったからだ。」とある。パーカー・ブラザーズが1930年代に特許を買い取ってから、今の「モノポリー」だけと改変されたという。
…
世界中に愛好家がいるモノポリーのルーツを巡る泥沼劇とは? - GIGAZINE
2015
https://gigazine-net.cdn.ampproject.org/v/s/gigazine.net/amp/20150621-monopory-history?amp_js_v=0.1&usqp=mq331AQFKAGwASA%3D#origin=https%3A%2F%2Fwww.google.co.jp&prerenderSize=1&visibilityState=prerender&paddingTop=32&p2r=0&csi=1&aoh=16017691670519&viewerUrl=https%3A%2F%2Fwww.google.co.jp%2Famp%2Fs%2Fgigazine.net%2Famp%2F20150621-monopory-history&history=1&storage=1&cid=1&cap=navigateTo%2Ccid%2CfullReplaceHistory%2Cfragment%2CreplaceUrl
パーカー・ブラザースからマギー氏に支払われた額は約500ドルで、The Landlord’s Gameの名前やルールを改変しないことが条件に含まれていたとのこと。マギー氏は売却に関してはとても前向きで、その理由は大きい出版会社から発売されることで大勢の人に遊んでもらえるからだったそうです。
ただし、アメリカの特許は「出願日から20年」または「特許付与日から17年」のうちいずれか遅く終了する期間までが存続期間となるため、訴えられたAnspach氏は「モノポリーはパブリックドメインである」と主張し、裁判の争点はモノポリーがパブリックドメインであるか否かに移っていきます。