ユリシーズ
「ジェームス・ジョイスのユリシーズ」
●スタッフ
脚色
ジョセフ・ストリック
フレッド・ヘインズ
撮影
ボルフガング・スシッキー
シーマス・コーコラン
音楽
スタンリー・マイヤーズ
キャスト
●
モリー・ブルーム・・・
-バラ・ジェフォード
レオポルド・ブルーム…
.....ミャ・オシア
スティーブン・ディーダラス
モーリス・ローブス
バック・マリガン・・・・・・・・・.
..T.P.マッケンナ
サイモン・ディーダラス・・・・・・・・・マーティン・デンプシー
メイ・ガウルディング・ディーダラス
・・シェイラ・オサリバン
ペインズ…
ジャック・パワー
ガーティ・マクドール・
ベラ・コーエン…・・
ゾー・ヒギンズ・・ジョシー・ブリーン・・マイルズ・クロフォード
ブレイゼス・ボイラン....
...グレアム・ラインズ
....ピーター・メヨック
フィオスアラ・フラナガン
.....アンナ・マハーン
•モーリーン・トール
モーリーン・ポッター
........クリス・カラン
・ジョー・リンチ
•序曲
• タイトル
「ジェームス・ジョイスのツユリシーズ"は、現代二〇世紀文学の夜明けであった。彼の文学史上ユニークな貢献といわれる”意識の流れ”は、三つの異なった世界の融合による。
彼は、現在・過去の追憶・未来の幻想の三つをそれぞれ区別することなく混然一体として一つのストーリーにまとめあげた。ジョイスにとって、この三つは等しく現実であり、彼は現実のこの異なる三つの面をあえてそれぞれ分離・差別・価値づけしょうとはしなかった。
従って、この映画においても、そのような表現はとっていない。
〃ユリシーズ”の有名な〃夜の街”の場面で、主人公のブルームはダブリンの赤線地域をさまよう。そこで彼が経験する一連のできごとは、同時に過去の追憶と未来の幻想の流れをよび起す。
これは、ジョイスの”意識の流れ〃の最もよき一例で、文学上の最も想像的で強烈な表現といわれている。
モリー・ブルームの有名な独白も純粋な"意識の流れ”で、夫とならんでベッドに横たわるモリーが、過去と未来の恋と恋人たちに思いをはせる。
現実とないまぜた一連の追憶と幻想の句読点のない連続。かくて、この映画は原作と同じく、観る者に新たな要求を提起するのである」
(F・O)
•マーテロ塔
夜明けー。
マリガン、大空と海を眼の前に屋上に立ち両腕を拡げる。
マリガン「神の祭壇におもむかん。(階下に向かって)来いよ、ディーダラス!くそまじめのジェスイット!(まじめに)愛する人々よ、これぞまこと
の聖晩さん。肉体と精霊と血と傷ですぞ。ゆるやかな音楽、どうぞ静かに」マリガン、くそまじめにヒゲを剃り始める。スティーブン・ディーダラス階下から上がってくる。
スティーブン「マリガン、ヘインズはいつまでいる?」
マリガン「困った奴だ。君を紳士と思ってない。イングランド人め、金貨と化不良が自慢だ。あいつは君を、わからないんだ」
スティーブン「彼がいるなら僕は出る」
マリガン「麻拭きを借せ。剃刀をふくんだ。詩人の舁拭きというヤツだな。アイルランド詩人の新芸術色。まさに背っばな色というところだ。伯母は、君がお母さんを殺したと思ってる。臨終ひざまづくぐらい、できたはずだ。お母さんが死の床で祈ってくれと懇願したのに。君には悪魔的なところがある」
スティーブンの回想し。
母親の死の床。
マリガン「ジェスイットとは関係なく。
哀れな犬。君にシャツと鼻拭きを少しやろう。古ズボンは?」スティーブン「有難いが、グレーははけない」
マリガン「はけないとさ!作法は作法だが。母は見殺し、グレーのズボンはいや。見るがいい、その詩人のザン!
何が気にくわない?言えよ!」スティーブン「母の死後、初めて君を訪ねた時、君は伯母さんに、母をみじめに死なせた男だと言った」
マリガン「そう言ったか?それが何が悪い?死とは何だ?病院では毎日人が死に、解剖室で切りまれる。みじめ、それだけだ。君は、お母さんの臨終に祈らないで僕に怒ってる。僕は、君のお母さんを侮辱する気はなかった」
スティーブン「母のことではない」
マリガン「では何だ?」
スティーブン「僕への侮層だ」
ヘインズの声が階下からマリガンに呼びかける。
ヘインズ「いるか?」
マリガン「(スティーブンに)そんなことでくよくよするな。ヘインズが朝食
だ。一ポンドしぼれ」スティーブン「今日は給料日だ」
マリガン「四ポンドか?ーポンド出せ。盛大に酔おう」
・塔の中の部屋
雑然とした部屋。
スティーブン、マリガン、ヘインズがテーブルを囲んでいる。
ヘインズ「(マリガンに)君は濃い茶をいれるんだな?」
マリガン「茶をいれる時は茶をいれ、湯をわかす時は湯を。両方一つの土瓶
ではできない”これは書きとめるがいい。立派な民芸だ。僕は破産だ、ディ
1ダラス。学校へ行って金をもってこ
い。詩人らは、今夜酒冥をはる。アイルランドは、各人が義務を果すことを求める」
ヘインズ「僕は国民図書館行だ」
マリガン「それより水泳だ。今日は、君の命の洗濯日かい、ディーダラス?
不潔な詩人の月一度のさかもり」スティーブン「ここは、潮流が洗う」
ヘインズ「君の句を僕の本に使ってみたい」
スティープン「金になるかい?」
ヘインズ「それは分からん」
マリガン「彼のハムレット論を聞くがいい、ヘインズ」
マリガン、食事を終って立ち上がり表に出ようとしてし。
マリガン「出てこい、ディーダラス!
残飯は食い終ったろう」
マリガン「(歌うように)おれは変な男。
母はユダヤで、親父は小鳥」マリガン、駈けて先へ行く。
ヘインズ「(笑って)何だっけ?」
スティーブン「〃おどけキリスト」
ヘインズ「前に聞いたのか?」スティーブン「日に三度、毎食後に」ヘインズ「君は信者でないらしい。言葉のもつ狭い意味で」
スティーブン「意味は一つだけさ」
ヘインズ「そうだね。ずるか借じないかだけだ」
•海岸
マリガン、岩の上に立ち手を組み、おごそかにつぶやく。
看板ヶ四〇フィート、男子専用”
マリガン「”"貧者よ盗む者は、神に貸す者なり。ツァラストラはかく言う”」マリガン、海の中にとびこむ。
•海岸の道
•塀に沿った海岸通り
スティープンとヘインズ、話しこみ
塔の外。
ながら歩いてくる。
マリガンの後から、スティーブンとヘインズ「僕は人格神の考えに我慢できない。君はそうであるまい」
ヘインズが肩を並べて歩いて行く。
ヘインズ「君のハムレット論は?」
スティーブン「自由思想の悪例だ」
マリガン「いや、僕はかなわん。君もヘインズ「アイルランド人はそう思うだ
杯以下では言えんだろう。簡単だ、彼ろう。イングランド人が君らに不公平
はハムレットの孫は沙の祖父で、彼だったことは、その一人として僕も認
自ら父の幽霊であることを代数で証明める。国をユダヤ人に渡すことは、僕
する。聖なる一杯の酒が彼の舌をとは反対だ。これは、国民的問題だ」
く」
ヘインズ「僕も神学的解釈を何かで読んだ。父と子、子が父のため償いをさせられる」
• ブルーム家の食堂
レオポルド・ブルームが、食堂をうろうろしている。
17
食事の仕度ーー。
猫。
テーブルに手紙の束。
妻のモリーの声が階上から響く。
モリー「お茶を急いでー!ノドがかわい
たわ。何て手間どるの?誰への手紙?」
プルーム、朝食ののった金を手に階段を上がる。
モリー、何かをさがしている。
ブルーム、彼女の下落を手にとる。
ブラジャー、パンティー等々。
モリー「いや、あの本よ。落ちたんだよ」
ブルーム、本をモリーに渡す。
モリー「ききたい言葉があったの。これ何の意味?
論・彼が家にいる時の
名前は?」
ブルーム「ギリシャ語からきた言葉だ。
•寝室
ブルームが入って来る。
つまり、霊魂の転生を意味するんだ」
モリー「やさしく説明して」
モリー、ベッドにだらしなく横たわ
ブルーム、本を読みながらー。
っている。
ブルーム「ハマフェイは呪いの言葉で犠
ブルーム「カーテンは?」
牲者を投げた"読んだの?」
ブルーム、窓ぎわへ近よりカーテンモリー「みだらなところは全然ないわ。
を開ける。
いつも最初の男に恋するの?」
射しこむ朝の光。
ブルーム「私は読んでない。別のが欲しいかい?」
ブルーム、モリーに手紙を渡す。
ブルーム「誰から?」
モリー「ボール・ド・コックのを借りて。面白い名前だわ」
モリー、手紙を広げて読む。
モリー「ブレイゼス・ボイラン。今日、ブルーム「”生まれ変る”ぴったりだ。
音楽会のプログラムをもってくるわ」
ポスターのショットー。
ある人は、死後別の肉体に生きると信じている。前世を覚えてるという人も
ハボイラン行独唱会”
いる」
ボイランとモリーがたわむれている。フラッシュ・バック。
モリー、顔を別の方向に向けて!。
モリー「焦げ臭いわ。何か火にかけてた
ブルーム「君は何を歌う?」
モリー「〃わが手与えん”と小恋の古くブルーム「じん臓だ!」
優しき歌”」
ブルーム、洗てて階下に降りて行く
二人の子供の写真!。
フライパンの上のじん臓し。
ブルーム「窓を、少し開けた方がいいか
い?」
モリー「ディクナムの葬式は?」ブルーム「十一時、らしい。新聞はみないが」
•.小学校の教室
スティーブンが生徒たちに講談している。
授業終了のベル。
生徒たち、表にとび出す。
顔色が悪く小さいサージェントが一人残り、おずおずとスティーブンに近づく。
サージェント「ディージー先生が書き直せって言いました」
スティーブン「自分でできるか?」
サージェント「いいえ!」オフ・シーンから。
スティーブン「無知で、役立たず、しかも誰かが彼を愛し、腕に胸に抱いた。
彼女がいなければ、全人類は彼をふみにじったであろう。彼女は、自分から受けついだ薄い血を愛した」
スティーブン、黒板に問題の解答を普いてみせる。
スティーブン「分かったか?二番は自分でやれるかな?」サージェント、うなずく。
オフ・シーンから。
スティーブン「俺も同じだ。このなで肩、ぶこつさ、少年時代の俺がそばに立っている」
スティーブン、少年に。
スティープン「簡単だろ」
少年、うなずく。
ディージーが少年を呼ぶ声。
スティープン「ディージー先生が呼んでる」
ディージー校長が教室に入ってく
る。
ディージー「ホッケーだ、サージェント(スティーブンに)ディーダラス君、支払いだ」
•校長室
は、いまや破壊作業を進めている」スティーブン「商人は誰であろうと安く買って、高く売ります」
ディージー「光にそむき罪を犯した」スティーブン「歴史は、誰でも逃れたい悪夢です」
ディージー「造物主のやり方はちがう。
すべての歴史は、神の告示に向かって動いている」
外の方から子供たちの喚声ースティーブン「あれが神です。街の叫び
ディージー「君はこの仕事に長くはいまい。早いほどいい」
スティーブン「編集者を二人知ってますから、返事は明日」
•校庭
スティーブン、校長の部屋から表に出て来る。
ディージー、彼を追ってしディージー「ディーダラス君、おしが言いたいのはアイルランドはユダヤ人を迫害せぬ唯一の国だということだ。知ってるかね?なぜだと思う?」
スティーブン「なぜです?」ディージー「入国させんからだ!」スティーブン、去る。
• 街
ブルーム、路上を歩いて来る。
通りがかりのライオンズが近よって話しかける。
ライオンズ「ブルーム、いい話は?(ブルームの持っている新聞を見て)今日の新聞か?見せてくれ。今日、金否ディージーは、がま口から金をとり出して数え、スティーブンに渡す。
スティーブン、給料を無造作にポケットにねじこむ。
ディージー、自分のガマロを見せて
ディージー「そんな持ち方では落とす。これがいい」
スティーブン「いつもからでしょうよ」
ディージー「貯えないからだ。イギリス人の自慢を知ってるか?”払うべきものは払ってきた。一文の借りもない”分かるか?」
スティーブン「未だです」
ディージー「そら思った。しかし、いつか分かる。我々は寛大だが、正しくなけりゃ」
スティーブン「私は大宮壮語が怖いです」
ディージー「わしには反逆の血が流れている。皆、王族の子孫だ」校長、デスクの上から書類をとり、スティープンに見せる。
ディージー「君の文学者仲間にお願いがある。新聞への公開状だ。口蹄疫だ。
読んでみたまえ」
スティーブン、声を出して原稿を読む。
スティーブン「”貴重な紙面を借りて要点を述べるならー"」
ディージー「簡明な言い方だろう?」
スティーブン「(読む)「男戦に事に当たる必要がある。ご掲載を感謝する&」ディージー「ぜい発表したい。わしは困難に取り囲まれている。イングランドはユダヤ人の手中にある。ユダヤ商人
賞に出るフランス馬だ」
ライオンズ、黒服のブルームに気づいてー。
ライオンズ「何か不幸でもあるのかい?その姿で~」
ブルーム「今日はディグナムの葬式なんだ」
ライオンズ「可哀そうに、奥さんは?」
ブルーム「元気だよ。二十五日、ベルフ
ライオンズ「そうかい?誰の催しでだ
ブルーム「巡業の一種でね。委員会ができたんだ。あのボイランだよ」
ライオンズ「ボイランがね。それはよかった。出馬表を見せてくれ」
ブルーム「読んだら、捨ててくれ」
ライオンズ「どうも」
ライオンズ、去る。
ブルーム、壁に貼ってあるポスターを眺める。
ポスター〃ポイラン興業提供、マリオン・ブルーム夫人独唱会”
サンディマウント海岸
スティーブン、波打ち際を考えごとをしながら歩く。
たくさんのカモメの群、波、空。
オフ・シーンから。
スティーブン「見える物の免れがたい様式。それだけにすぎない。眼を通して考えた。俺がここで読みとる万物の特色。魚の卵と海岸、それから近よるあげ潮。古びた長靴。暇をとじてみろ」
スティーブンが眼をとじると同時にスクリーン暗転。
スティーブンの声だけが響く。
スティーブン「闇の中をうまく進む。トッシュの剣をわきに下げて軽く叩く。
かたい音。さあ、汝の眼を開け。俺は砂浜に沿って永遠に歩み入るのか?
すべては溜えたのか?今開いて暗黒の不透明にいるとしたら?もう沢山
だ!
見えるものなら見てやろう」
珍品だった。ハハキトク、カニレチチお前が母を殺したという。塔の冷たい円天井の室が待ってる。今夜はあそこに眠るまい。マリガンは溺れる者を救った。大がこわい。お前は?
ボート
と救命ブイがあったら救うか?
正直
に答えろ!やりたい。やってみよう。水泳は強くないが。水は冷たい」
着かね?」
プルーム「いや、お一人です」
ボイランとモリーがたわむれているショット。
ディーダラス「仲間が悪くてね。マリガ
ンは手におえぬ不潔な悪党だ。ダブリ
•墓地
ンに聞こえた不良で、私は神の加護で
参列車たち、墓地の中を歩む。
近く、あいつの伯母か母親に、手紙を
他にも葬儀の群。
書いて眼を開かせんことには気がすまカニンガム「可哀そうに、子供だ」
ん。必ず叩きつぶしてやる。息子を破
ディーダラス「でも人生の苦労は免れた
スティーブン、眼を開ける。
減させてたまるもんか」
ね」
海岸、砂浜、光ーオフ・シーンか〇
路上
(回想)ブルームの息子。二匹のパワー「悪いのは自分で命を絶つこと
ら、
海岸から、街へ上る階段をのぼるス
大。犬の動作を見ているモリー。
だ。一時的発狂だ」
スティーブン「お前がなくてもいつもあ
ティーブン。
オフ・シーンからし。
カニンガム「同情の眼で見なけりゃ」
り、永久にあり、世は終ることがな
一人の少女がやって来て彼の横を通プルーム「息子で夢中だ。むりもない。
ディーダラス「自殺は卑怯者のするこ
い。女が俺をこの世に引きずり出し
り過ぎる。
財産を残す以上。作が生きてたらし。
と。批判はできない」
た。無からの創造。アダムの妻にして
見つめるスティープン。
あの朝テラスでだ。彼女は二匹の犬が
墓地を歩む一同。
友なるはだかのイブ、彼女は、へそを
オフ・シーンからし。
あれをしてるのを見ていた」
少し離れてブルーム。
もってなかった。キズのないふくれたスティープン「柔らかい・・・・・・やわらかいモリー「お願い、さわって。がまんでき
カニンガム(ディーダラスに)「ブルー
腹。びんとはった牛皮の楯。永遠から眼。やわらかい、やわらかい手。俺はないわ」
ムの前で自殺の話とは、へいこうした
無限に続く白く盛り上る設物の山」
淋しい。おお、さわってくれ、すぐ。
ブルーム「(オフ・シーン)生命の始ま
ぞ。彼の父は避自殺だ」
裸の女の彫像、父母の写真!。
皆が知ってるあの言葉は何だ?俺はり。あの時妊娠した。彼女の中の息ディーダラス「なんだって!それは初
スティーブンの声。
孤独だ。そして悲しい。さわってく子。生きてたら力になれたのに」
耳だ。毒薬自殺だって!」
スティーブン「罪悪の子宮。俺も罪の闇れ。さわってくれ!」
大運河のそばで馬車がとまる。
プルーム、一同から離れて、一人で
の中で生まれたのでなく作られた。俺
カニンガム「どうした?」
歩んでいる。
の声と限をもった男と、その息が灰の
葬儀馬車の中
パワー「とまった。ここは?」
メントン「後から来るのは誰だね?」
匂いのする亡者の母。二人は抱きあい
ディグナムの葬式。
ブルーム「大運河です。(空を見て、デケラー「ブルーム、広告とりです。ソプ
離れて神の意に従がった。新聞への校
ブルーム、ディーダラス氏、パワー、ィーダラスに)天気が変りますよ」
ラノのマダム・モリーは彼の妻です」
長の手紙、そのあとで酒場、十二時半
カニンガムが馬車にのっている。
ディーダラス「いつ変るかあてにならメントン「十五、六年前に踊ったことが
だったな。ついでにあの金は、バカに
通りすぎて行くダブリンの市街。
ん」
あるが、いい女だった」
なって、派手に使おう」
街の人々が馬車を見て脱帽する。
馬車が動き出す。
メントンとケラー、キリスト像の前
歩くスティーブン。
ディーダラス「(ブルームに)いい習慣
路上のブレイゼス・ボイラン。馬車
に来る。
海岸!そしていろいろな物体。
ですな。まだ残ってるのはうれしい」
を見て拶換する。
ケラー「霧の夜、二人の酔っぱらいが友
オフ・シーンからー。
馬車の窓から、スティープンが海岸パワー「気がつかん。いや見た」
人の墓を探しにきて、マルカイの墓を
スティーブン「ラテン区帽。神よ、身な
を歩いているのが見える。
ディーダラス「誰だね?」
教えてもらい、やっとのこと墓を探し
りはちゃんとしろ。パリではよくサンブルーム「あなたのお知り合いだ。息子パワー「ブレイゼス・ボイランが、たれあてた。一人はマルカイの墓神を読め
・ミシェル街に出かけた。持ち帰った
さんが」
髪を風に吹かせて」
たが、もう一人は救世主の像を見て、
貴重な戦利品。青いフランスの電報はディーダラス「どこに?マリガンも一
ブルームの顔が曇る。
”ちっとも似てない」と言った。ミマ
ルカイじゃない。誰がこんなものを作った?〃」
ましょう」
レネハン「次はどの酒場へ?私はムーニーだ」
• 新聞社
一同、室を出て行く。
ブルーム、やってきて輸転機の間を
ブルーム、姿を現わす。
通り編集室へ入る。
ブルーム(クロフォードに)「二カ月の
クロフォード「ドアを閉めろ!風が吹更新です。ただし記事がほしいそう
きこむ!」
で」
ブルーム「キーズの広告ですが、上に鍵クロフォード「俺のケツでもなめろと言ってやれ」
を二つ」
クロフォード「でき。デザインは?」ブルーム「デザインが手に入れば出しま
ブルーム「キルケニーの新聞に出てまし
す」
た」
クロフォード「俺の尊いケツをなめれば
オロフォード「できる。三カ月ごと契約いいんだ」
を更新するなら」
ブルーム「今とりに行くところで」
•街
クロフォード「行け!
うまくいくさ」
H・E・L・Y・Sの看板をさげたブルーム、編集室から出て行く。
サンドイッチャンたちが、ブルーム
レネハン(一同に)「金委賞の勝馬を教
を追いこして行く。
える。ハセプタ号だ〃」
最後の'SS"が遅れてし
ブルームと入れちがいに、スティーブンが入ってくる。
ジョシー・ブリーン夫人が歩いてく
る
スティーブン、クロフォードに原稿ブルーム「ブリーン夫人、いかがです?」を渡す。
ジョシー「いつもの通りよ。モリーはいかが?」
クロフォード「誰からだ?」
スティープン「ディージー氏」
ブルーム「元気だよ。ご主人は?」
クロフォード「(読む)”口蹄疫についジョシー「夫のお話はよして。昨夜のこて〃」とをご存じ?」
〃スペードの化物”が
スティーブン「ディージー氏の原稿で」
階段を上るって大騒ぎ」
クロフォード「彼を知ってる。紅君は手ブルーム「ミナのお産は?」
におえぬしたたか女。あの女こそロ監ジョシー「いま寄ってきたら、ホレス街
患者だな。(スティーブンに)何かの産院にいるのよ。三日も苦しんで。
辛らつなものを書かんか。口蹄疫か!
難産だって看護婦が言ってたわ」
ばかばかしい!みんなでやるとしよ
/S"の看板のサンドイッチマンが
う。父と子と精霊に誓って」
やって来る。
スティーブン「皆さん、会議は閉会とし
ジョシー、彼に近づく。
ジョシー「うちの人よ。弁当をもってきたの。モリーによろしく」
•食堂
ブルーム、汚ない食堂に入ろうとするが、品の悪い雰囲気に顔をしかめて出て行く。
客の一人がゲップをする。
•博物館
プルーム、デザインを調べるため図書館に入ろうとするが、マリガンの姿を見て、あわててとなりの博物館に入る。
マリガンとスティーブン。
プルーム、そしらぬ顔で博物館のビ
1ナス像を眺める。
豊かな胸、腰ー。
マリガン(スティーブンに)「さまよえるユダヤ人だ。腰を見たか?ディーダラス、危険だ。尻あてをしとけ!」
o
ディーダラス氏、店から出てきて娘と出くわす。
ディリー「パパ!」
ディーダラス「頼むから姿勢をよくしな
さい」
ディリー「お金ある?」ディーダラス「どこで入る?一文も貸
す奴はいない」
ディーダラス、仕方なさそうに少しの金を娘に握らせる。
ティーダラス「大切に使うんだよ」
ディリー「もっとあるはずよ」
ディーダラス「お前もお袋が死んでから
生意気になったな」
ディリー「もうけ口を探したら?」
ディーダラス「オフネル街のドブを探したが、ここもさがそう」
ディリー「変ってるわね」
ディーダラス「これでミルクとパンか何か買うがいい。すぐ帰るから」
•古本屋
雨上り。
街角でブルームが古本屋をのぞいている。
通りがかりのレネハンとマッコイ。
レネハン「いるぜ!」
マッコイ「何を買ってるんだろ?」
レネハン「ろくな本ではあるまい」
マッコイ「本のムンだ」
レネハン「ブルームは教養が広い。下らぬ俗人とはちがう。芸術家の素質がある」
古本屋の屋台を出しているホーカ
あれこれとさがすブルーム、本を手にとってめくる。
ホーカー「いい本だよ」
ブルーム「家内にはむかないね。(本を読む)「夫が与えた金は全部高価な服飾に裂やされた。愛人のため!ラウルのために!唇は甘美な彼の唇と重なり、彼の手は服の下の豊かな肌にさわった〃遅いじゃないか”彼女を見すえて彼は言った。美しき彼女は肩かけを脱ぎすてて、たくましい肩、盛り上った乳房を出した”。これをもらおう」
ホーカー「「罪の甘さ”いい本です」
ブルーム、本を受けとって去る。
・運 河
ブルームが運河のそばを通りかかる。
空に舞う大群のカモメ。
ブルーム、カモメの群を見上げる。
ブルーム「誰にしょうかな?黒い服がいい。あれだ。空からは面白かろう」
・古本屋
スティージンの妹ディリーが、古本屋をのぞいている。
通りかかったスティーブン。
スティーブン「何してる?」ディリー「あっちの車で買ったのよ。役に立つかしら?」
スティープン「〃フランス語初歩”、フランス話を習うつもりか?そりゃ結構だ。親父の質草にさせるな。僕の本は流しただろう」
ディリー「仕方ないのよ」
・街角
ブルーム、ボイランとモリーの姿を想像して歩く。
ブルーム、オフ・シーンから!。
モリーの声「あなた、さわって。我慢できないわ」
ブルーム「あの頃は幸福だった。俺は二十八、彼女は二十三、ルディーが死んでからは変った。あの幸福は戻らん。
昔を今に返すことはできん」
酒場
ブルーム、酒場の片隅で食事をしている。
ディーダラスが酔って歌っている。
”いにしえの愛の歌は今もなお耳に残る。
その歌は永遠にわが心の奥に残る。
足おとはよろめき
道は遠ざかるとも。
一日の終りにはわが耳にささやく。
歌声は
薄明にたゆとう。
光りは
うすらぎて
ゆらめく
ものかげが
かそけくも
来たり去るとき・・・・・・歌声に聞き入るブルーム。
ブルーム、モリーとの楽しき日々を思い出す。
ブレイセス・ボイランが入って来
る
お客の一人「どうだい?」ボイラン「しごく元気だ。馬は?金
盃賞は?」
客「結果は四時だ」
ヘインズ「ハセプタ”が勝つ」
ボイラン「僕は思いきってニポンド賭けた。女友だちのため」
ヘインズ「死んだディグナムのため祈ろ
う」
酢っぱらい「彼が死んだ?」
声「間ぬけ亭主!」
ボイラン「何時だ!四時だって?遅れた!」
ボイラン、ブルームに聞こえよがし言って、おれと彼の友人たちが、彼の
に言って出て行く。
遺徳を談えていたと伝えてくんな」
うつむいているブルーム。
ブルーム「喜んでお伝えする」
酢っぱらい「俺が奴と別れてから五分とたっていねえ。本当だ」
酢っぱらい「ボイランが北へ演奏旅行するそうだな」
ヘインズ「そうかな。けさ葬ったぜ」ブルーム「その通り。いわば夏季巡業でしかに見た」
酔っぱらい「慈悲深いキリスト。俺はた格好な夏休みさ」
一同、ブルームを見てフクミ笑い。
ドーラン「キリストが、選悲深いだって?」
ブルーム、知らぬ気に。
ヘインズ「ブルーム夫人がスターで」
酢っぱらい「何だって?」
ブルーム「私の家内かね?歌うよ。成
ドーラン「ウイリーを殺すのが慈悲深い功するだろうね。彼は立派な事業家
のか?」
だ」
酔っぱらい「浮世の苦労を除いてくれたんだ」
酢っぱらいが、レネハンを呼ぶ。
酢っぱらい「気のぬけた顔をしてるぜ。
ドーラン「哀れなウイリーを殺すなんて
金盃賞、一対二〇〇で〃スローアウェイ”にさらわれた」
大それた悪党だ」
犬がブルームにづく。
ヘインズ「二〇対一だって!どうせ俺たちは芽がでないぜ」
ブルーム、犬をさけようとする。
客(ブルームに)「咬みはせん!」
レネハン「弱き者よ、汝の名はハセプ
ブルーム「カニンガムは?」
タッ」
ヘインズ、ブルームに呼びかける。
ブルーム「(つぶやく)世界の歴史は迫害でいっぱいだ。民族間の憎悪をけし
ヘインズ「何をのむ?ブルーム」
ブルーム「私はいい。これ以上飲めなかけて」
い。葉巻をいただこう」
客「民族って何のことだ?」
ブルーム、カウンターに近づく。
ブルーム「同じ場所に住む同じ人々のことだ」
ヘインズ(ボーイに)「上等のをあげろ」
客「(ブルームに)「犬が怖いのか?」
ヘインズ「俺は五年間同じ所にいるから 民族だな」
酢っぱらい「小便をかけられるのがこわいのさ」
ブルーム「いろいろの場所に住む人もある」
ヘインズ(ブルームに)「飲まない?」
ブルーム「ディグナムの保険の件で」
カレネハン「俺もそうだ」
ニンガムが私にたのむとー」
客(ブルームに)「君の民族は?」
ドーラン「お前さん行くかね?
それじブルーム「アイルランドさ。ここで生まれた」
や細君に、私からだといって、深いお
悔みと、葬式に行けなかったおわびを盛っぱらい(ヘインズに)「酒をよこせ。
2425
どれが誰のだ?」
ヘインズ「それは俺のだ。まちがいね
一同がブルームを開笑しているのを感じて、ブルーム激してくる。
ブルーム「同時に、私は今も迫害され憎まれてる人種に展してる。現にモロッコで家畜のように売られてくる」客「(ひやかして)天国の話かい?」
ブルーム「(激して)不正についてだ」
ヘインズ「では力で鍛え!」プルーム「それはいけない。黒力とか憎悪は。侮とか憎悪は、人間にとっての生活でない。皆知っている。真の人生はその正反対だ。つまり憎悪の正反対だ。私は裁判所へ行く。カニンガムには、すぐ戻ると言って下さい」
客「異邦人への新使徒。あまねき愛」ヘインズ「汝の隣人を愛せか?」
客「ユダヤめ、わが隣人に、物を乞え、さ!」
酢っぱらい「元気だ歌え。もっと力をだ
しな!」
客「神とマリアとパトリックの祝福を」
ブルーム、外へ出て行く。
レネハン「行先は分かってる。裁判所はウソ、競馬の配当をとりに行ったんだ。〃スローアウェイルの勝ちを知ってた。穴を知ってたのは彼一人だ」
ヘインズ「奴が穴馬さ」
カニンガムが入って来て、一同に挨拶する。
カニンガム「ブルームはどこにいる?」
レネハン「後家と孤児をだましてら」
客「それがアイルランドの救世主ときた
か」
カニンガム「しかし、彼らは救世主を待
男たち、酒場から出てきてわめく。
す」
っている。我々も」
客「誰の神だと?」
医者が通りかかる。
ヘインズ「生まれる男は、皆、救世主とブルーム「イエスの叔父も、貴様らの神ディクソン「ブルームさん」
思ってる。だから、ユダヤ人は子を持
はユダヤだ」
ブルーム「先生、私は元気です。(看護
つと興奮する」
婦に)産婦に面会は?」
カニンガム「ブルームの死んだ児が生ま•教会
看護婦「うかがってみます。出産間近
れる前がそうだ。ある日、南市場で彼
教会の前を通りすぎるブルーム。
で」
は乳児食を買っていた。お産の六週間
ブルーム「おかまいなく」
前だ」
• 海岸
客「あれで男か?」
ブルーム、海岸を通りすぎる。
〇病院の食堂
ヘインズ「不能者さ」
海辺に女たちと子供。
ディクソン、ブルームを食堂へ案内
パワー「しかし、男が生まれた」
足を組んで岩にかけている娘ガーテ
する。中からにぎやかな歌声。
客「誰のタネかな?」
ィ。
ディクソン「一杯やりたまえ。酒盛りの
カニンガム「汝の隣人への施しさ」
ビディ「花火へ行くわよ、ガーティ」
最中だ」
ブルームが入って来て、カニンガム
ガーティとブルーム、顔を合わせる。
歌声”はじめに彼は
に近づく。
ガーティ、足をもち上げ股間をブル
女をくすぐり
ブルーム「裁判所へ探しに行った」
ームの視線にさらす。
ついで女を
酔っぱらい「裁判所か。五ポンドもうけ
あわてるブルーム。
軽くたたき
たな」
ブルーム、ガーティを見つめながら、
それから入れた
客「ケチンボ!このユダヤ人め!こ
岩の壁でひそかにオナニーにひた
カテーテルを
ずるい便所の鼠!」
る。
なぜなら彼は
ブルーム「(怒って)何だって?」
ガーティ、やがて立ち上がって夫
医学生だった
客「誰にも内証だぜ!イスラエル萬歳
る。
彼はたのしい
!」
ガーティはビッコだ。
医学生だった〃
ブルーム、男につかみかかるがカニ
食堂には、スティーブン、レネハン、
ンガムにとめられる。
•橋
マリガン、医学生らがいて、酒を飲
カニンガム、ブルームを表に引きず
橋を渡るブルーム。
み騒いでいる。
り出して車に乗せる。
看護婦(一同に)「お静かに願えません
ブルーム、車の上から酒場の男たち•病院
か。ここは病院です」
に向かってわめき散らす。
ブルーム、病焼の廊下で看護婦と会マリガン「よろしい。皆静かに!みん
ブルーム「この世でニラい人間はみなュ
う。
な静かにしてくれ」
ダヤだ。イエスも、その父も、君らの看護婦「レオポルド!どうした風の吹
マリガン、歌い出す。
神は一」
きまわしで?」
〃人生とは
カニンガム「イエスには父がない。行こブルーム「ブリーンからミナ・ピュアフ
何とも陰気なもの
う」
ォイが難産だと聞いて」
みじめさと
カニンガム、車を動かす。
看護婦「可哀そうに。お産は女の大役で
くらさでいっぱい
おやじは肛門狭容
マリガン「一杯やりたい。一本よこせ」
お袋の子宮はうつろ
ブルーム「一晩中やってたのか?」
従兄のカスパーは
マリガン(スティーブンに)「ヘインズ
同性愛の罪で
が帰りたいとき」
この国から
スティーブン、テーブルに顔をうつ
追放された
ぶせにしたままー。
姉はもう四十二回も
ブルーム「病気らしい」
堕胎をしている
マリガン「はかな!家で寝たいんだ。
伯父のチャーリーは
ァイルランドの夜明けにふれてな。デ
去勢されて
ィーダラス、鍵をくれ」
めったに
笑うこともない
•街(夜)
なさけないのが
夜ふけの街を行くスティーブン。
おれの商売
ブルーム、その後を追う。
じじいのイボジを冷やすための氷かき”
停車場
スティーブン、正面に坐っているが
スティーブン、列車に乗る。
相当に酔っている。
ブルームも続いて乗りこむ。
マリガン「静かに!詩人が諸君のため特別な芸を提供する」
街(夜)
スティーブン「(歌う)
ADORO TE
夜ふけの街を。よろめくスティーブ
DEVOTI, LAETENS DEITAS, JESU
ン。後に続くブルーム。
CHRISTI FIGURIS →お前らに分かるか」
売春宿
雷鳴がとどろく。
スティーブン、よろめきながら売春
リンチ「二階のあいつだ」
宿の前を通る。
マリガン「屋根で神さまが暴れているん
窓から呼ぶ売春婦。
だ。私の名刺だ」
売春婦「おいで、いい話があるよ。生態だょ」
ブルーム、スティーブンが酔っぱらっているのを見かねて、マリガンに聞く。
スティーブン、何事かつぶやきながら素通りする。
ブルーム「どこが悪い?」
売春婦「キザな医学生だよ!気ばかり
マリガン「ジェスイットが地獄の話で迷
で文なし!」
わしてる。詩人にはなれないね。彼の
ブルーム、売春宿の前を通りすぎ
悲劇だ。君のは何だね?」
る。
ブルーム「何がだね?」
売春婦1「生娘が十シリング。まだ水アケ前だよ。
・ブルームの幻想
ブルームの頭の中に、いろいろな人物が現われては消える。
ガーティ「良心はないの?”世のすべてを我は次に与えん"。あんたを憎むわ
ブルーム「私を?夢を見ているんだ」ガーティ「ズロースまで脱がせて。いやらしい女房もち。でも好きよ」ジョシー「レオポルド、罪をあさってる
ブルーム「名前は呼ばんでくれ。仕事の関係だ。私は、廃業娼婦救済会の幹事
ジョシー「ごまかさないで。モリーに言
ブルーム「ちょっとでも私に抱かれたい
ジョシー「くだらない!鏡に相談なさ
ブルーム「昔のなじみがいに四角関係、つまり結婚した同士の新婚。君を愛し
ジョシー「恐れ入るわ。その顔で、よく
プルーム「昔はポウェル、ダブリン一の美人。クリスマスを覚えてる?」ジョシー「道化まじりの朗読で、あなた
ブルーム「淑女紳士諸君、アイルランドジョシー「(踊って)すぎて帰らぬ優し・
の過去よ。恋の優しき歌よ。私は階段の寄生木の下で。あなたのトゲを抜い
ゲ前だよ」
プルームの頭の中に、いろいろな人物が現われては満える。
ガーティ「良心はないの?「世のすべてを我は次に与えん”。あんたを憎むわ
ブルーム「私を?夢を見ているんだ」ガーティ「ズロースまで脱がせて。いやらしい女房もち。でも好きよ」ジョシー「レオポルド、罪をあさってる
ブルーム「名前は呼ばんでくれ。仕事の関係だ。私は、廃業娼婦救済会の幹事
ジョシー「ごまかさないで。モリーに言
ブルーム「ちょっとでも私に抱かれたい
ジョシー「くだらない!鏡に相談なさ
ブルーム「昔のなじみがいに四角関係、つまり結婚した同士の新婚。君を愛していた」
ジョシー「恐れ入るわ。その顔で、よくそんなことを!」
プルーム「昔はポウェル、ダブリン一の美人。クリスマスを覚えてる?」
ジョシー「道化まじりの朗読で、あなたは座の花形」
ブルーム「淑女紳士諸君、アイルランドと家庭と美女」
ジョシー「(踊って)すぎて帰らぬ優し・
の過去よ。恋の優しき歌よ。私は階段の寄生木の下で。あなたのトゲを抜いたっけ。あなた、あついわ。ヤケドし
ブルーム「君の新婚は永久に許せない。
私のいのち。私は絶望だ」
ジョシー「なぜキスして、いやそうとし
ブルーム「モリーの仲良しの君に、そん
売春婦がブルームに呼びかける。
売春婦2「遠くへ行くの?」
売春婦3「まん中の脚の具合はどう?」
売春婦4「固くしてあげようか?」
ドリスコル「卑しい女じゃないわよ。カタギだわ。彼の悪さでやめたんです」
ドリスコル「ある要求をしたのさ。いく
•夜の街(幻想)
夜響が現われて、ブルームを連行し
ブルームがドリスコルを台所でからかっているショット。
ブルーム「お前にはエメラルドの靴下ド
夜響1「現行犯だ。小便無用」
メをやったほどだ。こそ泥を働いた時
夜巻2「姓名住所は?」
でも助けてやった」
ブルーム「ドクター・ブルーム。歯科医
ドリスコル「私がカキを盗んだかどうか
です。従兄のフォン・ブルーム・パシ
*は、オーストリアとエジプトの半分
を所有」
エジプト人の扮装をしたブルームのショット。
夜部2「証拠は?」
ブルーム「クラブは、陸海軍青年将校」
夜容2「職業は?」
ブルーム「文筆業です。作家でジャーナリスト。イングランド、アイルランド
新聞に関係」
クロフォードが電話を受けているショット。
クロフォード「〃小便週刊尻拭き社”だ。ブルーム?
全然知らんね」
法廷に立たされているブルーム。
裁判席、傍聴席ともダブリンの人々
皆官1「人民対ブルーム!ドリスコル
ドリスマルが証人席に立つ。
ドリスコル「この人は奥さんの留守中、家の裏で安全ピンをはずせと私を驚かしました。そして私に抱きつき、四カ所にアザを作りすそをまくりました」
ブルーム「殴り返したくせに」
ドリスコル「私が抵抗すると、喋らないでくれと言いました」
法廷、ざわめく。
被告は虚為の陳述を
ブルーム「無罪です!」弁護人のカニンガムが立ち上がる。
カニンガム「ここで軽卒に酒の上の失敗
た妻の写真だそうで、たくましい闘牛
土と不義の変わりをしてるところです。彼は、私にも同じことをしろとすすめるのです。口で言えない方法で手紙を汚せとか、彼に馬乗りになってくれとか、うてとか、しきりに頼むのです」
バリー夫人「私もです」
女たち、コーラスのようにロ々に、私もです”と叫ぶ。
トールボーイズ夫人「神に醤って私は、
皮ひんむいてやる」
を論ずべきでない。あえて言うが、肉体関係はなく、またドリスコルの婦思は二度と犯されなかった。被告の家庭には錯乱があったが、今は正常です。
今はアジアの広大な土地を抵当に入れ、不遇ですが。スライドをいまお目
スライドが映写される。
ブルーム、エジプト風の扮装をして、若い女を相手にしている。
カニンガム「若い婦人は娘の扱いを受けた。私は見えざる力が働きかけてる反証をここに提出したいと思う。疑うならば起訴されたい。(ブルームに)立派にふるまっていただきたい」
ブルーム(法廷に)「ーポンドに一ペニ
傍聴人の一人、バリー夫人がにわかにブルームを攻撃し始める。
バリー夫人「逮捕して!彼は私に匿名の手紙を送り、王室劇場のボックスで美しい私の眼を見て私に深く思いこが
れ、ポールドコックの作罪の甘さ”を郵送すると申し出たのです」
ベル夫人「私にもし。いやらしい男です。何度も手紙をよこして、ビーナス”などとおだてあげ、私の脚や豊かなふくらはぎを最上級の言葉でほめあげたり、レースに包まれた秘部が想像できるなどと、ほめたたえたあげく、できるだけ早い機会に、姦通でベッドを汚せとすすめるのです」
トールボーイズ夫人「私もよ。この平民のドン・ファンは、二重封筒で卑猥な写真を送ってよこしました。それは半裸体の優しいセニョリタで、彼が撮っ
トールボーイズ夫人「誰がきくもんかね。下司の分際で私をくどくなんて!
人前で存分ぶってやる。女房を寝とられたくせに。ズボンをとって!」
ブルーム、女たちにこづかれ打ちのめされて、年につながれる。
•牢屋(幻想)
ブルーム、シマの毛皮をまとった女たちに追いたてられて、牢の中へ追いこまれている。
ロやにわめく女たち。
ブルーム(ベル夫人に)「また?あり
がたい」
ベル夫人「尻をぶっておやり!」バリー夫人「シマがつくまで!」
トールボーイズ夫人「女房もちのくせに
、」
ブルーム「私は平手うちを期待してた。
体がほてり、血行をよくするだけ」
・裁判(幻想)
再び法廷のシーン。
ブルームとダブリンの市民たち。
少年たちのコーラス「「聖心の使者”。
女房をとられた男の新住所!」人々のささやき声し。
ライオンズ(クロフォードに)「金盃営は、二〇対一でブルームは百シリング
だ」
ケラー「ブルームは、凶悪なテロ犯人、
文書崎造、重婚、ぜげん、裏切られた夫、ダブリンの公安妨害者」
判事「余は、白人奴隷売買を廃止し、害虫を取り除きたい。彼を被告席よりマウントジョイ刑務所に移し、絞首刑に処すものとす。命令をおろそかにすべからず。汝に神の加護を!誰がユダを絞首する?」
トールボーイズ夫人「神かけてひどい目にあわせてやる。眠っていた牡虎が暴
•ベラの売春宿
ブルーム、売春婦のゾーに呼びとめられて、中へ招き入れられる。
れ出したよ」
バリー夫人「うんとぶって!」
ブルーム「私に?」
ベル夫人「息の根をとめて!」
ゾー「そうよ。お友達と中にいるわ。と
バリー夫人「去勢して!」
ラ・コーエンよ。あんたは、あの人のお父さん?」
ブルーム「寒い!
ふるえる!
原因は
君が美しいからだ。許してくれ。見逃ブルーム「いや、ちから」
してくれ」
バリー夫人「きかないで!」
ゾー「二人とも黒服ね。”小鼠”さんはおとなしい?どんぐりは?」
ブルーム「奇妙なことに、いつも右側に神よ、レオポルド一世を守り給え!」
とらん」
ある。右が重い。百万人に一人だそう
人々の歓声し。
コステロ「お祭りです」
た。育ちのいいアクセントだ。ダブリブルーム(司数に)「そこなる僧正。快プルーム「お祭りだと?
これは聖幾で
ン生れ?」
く受けよう」
すぞ。余は公民道徳の改善と、十戒を
ソー「イングランドよ。煙草ある?」
同数2「アイルランドとその属領におい強調したい。新世界の建設と、ユダヤ
プルーム「めったにのまない。葉巻は、て、すべて陛下の判断に基き、法と仁
数回数異教徒の団結。富と恋愛の自
時々やるがね。もっといい口の使い方
慈をほどこし給うや?」
由。自由国家の教会の自由」
があるのにね」
プルーム「造物主のお導きにより、そう
ゾー「さあ、大道演説でもしたら」
することを誓う」
•街(幻想)
ブルーム、くつろいでゾーに話しは
ブルームの頭に、おごそかに王冠が
ブルーム、演説している。
じめる。
のせられる。
人々ー。
プルーム「海賊的資本家が何だ?機械
大司教「汝らに歓びを語らん。我ら死刑 ディーダラス「牡鶏をおそう自由」
は彼らの合言葉だ。労働節約の道具。
執行人をもつ。レオポルド・パトリッ
ブルーム「民族混交と雑婚」
相互殺人のため作られた怪物。金で売
ク、ここで汝を戴冠せしむ」
レネハン「男女混浴は?」
られる労働に、飢えた資本家が生む貧
貴族たち「陛下の臣として忠誠をつくす牧師「彼は監督派で、僧仰の絶滅を望む
欲。貧民が死する時彼らは一」
ことを誓い奉る」
無主義者」
ブルーム「わが臣民よ。余はここに今日クローン「けだもの! ろくでなし!」
• ダブリン市(幻想)
労働者姿で演説するブルーム。
聴き入る人々。
男「ダブリン市長に萬歳三唱!」市長姿になっているブルーム。
より以後、前夫人を離婚し、新たに夜ディーダラス「歌ってくれ!古い恋の
の輝きなるセリーン姫をめとることを
歌を」
あえて宣言する」
ブルーム「(歌う)別れぬと誓ったが、
半裸のセリーン姫が王座のブルーム
彼女は裏切った」
にかしづく。
ディーダラス「彼にかなうものはない」
大使「陛下こそわが王」
レネハン「名優だ!」
町のおえら方。
男「はてさて、あれがブルームかね?」
男1「あれが偉大な改革者プルームだ」
女「祖国の至宝」
ブリーン「彼は自然の目的を害うため、
プルーム「愛する臣民よ。新時代は明け機械装置を使う男だ」
んとしている。余ブルームは、波らにドウィー「キリスト信者で反ブルーム党
告ぐ。今や時は近い。しかり、ブルー貝よ。ブルームという男は地獄の生ま
ムの言にかけて汝らは、やがて未来の
れで、大悪党汚行にけがれた女の崇拝
芸術家「古典的な顔。思想家のひたい」
新アイルランドなる新ブルーム聖地た
者だ。火刑の柱と新、たぎる油がふさ
• 病院の手術室(幻想)
手術台に腰かけるブルーム、全裸で局部に帽子をあてている。
医師と、見守る医学生たち。
マリガン「ブルーム博士は両性の変質者
で、不義の子。放縦な添欲の結果として、遺伝的てんかんをもち、慢性陰部露出症の徴候が顕著で、潜在的に狡
猾。自感のため、早くはげゆがんだ理
想主義者。改心した放蕩者で、金の入
れ歯、隆の検査と肛門、わきの下、胸の毛に対して、酸性試験の結果〃処女膜のある処女”と診断した」
ディクソン「ブルーム教授は、女性的男性の好適例で、道徳心は単純で愛すべく、多くの人は親しむべき人物と見ている。変った人物で、内気だが精神薄弱とは言にない。一説には父の死後生まれたともいう。私は最も神聖なる意味をこめた言葉で、党大な処置を懇願する。彼は子供を生むのです!」
笑い声!!。
ブルーム「私はぜひ生みおとしたい」
声「ブルームよ、汝は救世主か?」
ブルーム「その通り」
声「では奇跡を行なってみろ。予言だ」
ブルーム「金盃賞は〃スローアウェイルが二〇対一で優勝だ。あらゆる狂気、愛国心、死者への追悼は、捨て去れ!」
るべき黄金都市に入らん」
わしい」
•.宮殿(幻想)
宮殿の人々にかしづかれたブルームアイルランド王の戴冠式ー。
司教1(ブルームに)「疑いもなき皇帝にして大統領、気高き議長。至高にし
て至尊権勢ならびなき王国の支配者。
母親たち「(歌う)おじさん!おじさクローン「私刑だ!」
•売春宿
ん!」
コステロ「大悪人め!」
再びブルームと売春婦ソー。
歌う子供たちし。
ブルーム「真夏の悪夢。私は無罪だ。私ゾー「顔が紫色になるまで話して!あ
コステロ「ご園にスタウトーダース献は、旧友の性病専門家マリガン博士にんたは好きな女と早くできすぎたの
上します」
医学上の診断書を作ってもらうことにね。分かるわ」
ブルーム「ブルーム夫人は贈り物を受け
する」
ブルーム「男と女の恋が何だ?いわば
コルクとビンさ」
スティーブン「初めに詞あり。終りに果
ソー「私はヤクザは嫌い。安達売でも相しなき世界あり、八つの福音よ」
手にしな」
ゾー「煙草は?」
ブルーム「おれはキザな男さ。君は必要フェリー「歌って、"恋の古い優しい歌”
悪だ。ロンドンか?」
を」
ゾー「ヨークシャーよ。廿日風さん、もスティ1ブン「声がでない。ダメだ」
っといいことをしてよ。ショートの金フロリー「破戒僧なのね」
ある?」
ゾー(ブルームに)「ちょうだい!
プルーム「もっとある。彼女が知ったらお利口さんね。ほら!」
それこそやくだろうな」
おかみのベラとブルームとの暗黙の
心理園。
• 演説会場(幻想)
一人の懐古主義者が人々に演説をぶっている。
懐古主義者「時は来た。母親にはあすこへ行くと言え。ただちに参加せよ。永遠の駅まで無停車。君たちは神か、それとも下司か?もし再臨があったら用意はいいか?宇宙力を感ずるのは君たちしたいだ。われらは宇宙が怖いのか?否、天使の味方になるのだ。
さあ証営せよ」
キティ「忘れてうっかりして、また間違いを犯しました。鉛管工が、私の純潔を汚しました」
フロリー「コニャックの上にブドー酒を飲んだからです」
ゾー「ウェランがベッドに忍びこみ、あれを許したのです」
サーカスの小屋のようなものの中で四つんばいの男たちの、奇妙なダンスが行なわれる。
ベラ、男装してムテをもちブルームに迫る。
ブルーム、女となる。
ベラ「どうだろう?ぐっしょりだよ」ブルーム「きつい?」
ベラ「ヘマをするとお前さんの急所をけ
っとばすよ」
ブルーム「今後も相変らずお引き立て
を」
ベラ「恥知らずめ!」ブルーム「女王様!」
ベラ「不義の尻をあがめる奴!クソ食
いめ!」
ブルーム「崇高なる君!」ベラ「足を前に出して!左足を一歩らしろにひくのだ。お前は倒れる。ほら
倒れる」
ブルーム、四つんばいになる。
ベラ、ブルームに馬のりになる。
ブルーム「松露よ!」
ベラ「さあ、この重みを味わえ。奴隷よ
次の王の前にぬかずけ!」
売春宿
スティーブン、リンチ、ブルーム、おかみのベラ・コーエン、女たち。
ブルーム「絶対そむきませぬ」
プラ「ばかめ!
次は知るまいが、余は
汝の運を定めるダッタン人だ」
28
29
ゾー「いないわ」
ブルーム「います」
フェリー「悪気はなかったのよ」
キティ「いじめないで」
ベラ「おいで!ちょっとお話がある。
いい子だよ。ちょっとこらしめに言ってあげよう。お前のために柔らかい安全な場所をこしらえてあげる。やさしくしてあげよう。
いいかね。もう逃げ
られない。一生おれを忘れさせないぞ」ブルーム「ばあやさん!いじめちゃイ
やよ」
ベラ「そう待たすな。(女たちに)おれが乗るから押さえつけてろ」
ベラ、ブルームにまたがる。
女たち、口々に騒ぐ。
ベラ「ギネスの優先株が十六ポンドと%になった。買わなかった俺はバカだった。不人気のスローアウェイが二〇倍の払い戻し。あの灰皿は、どこへいった?お前の罪の生活のうち一番わいせつなのはどれだ?過去の罪障がお前を責めてるか?」
タイトル"過去に犯せる罪”
女たち「彼は、ブラック・チャーチの蔭で密通したり、電話室の器具に変なまねをしながち、口にできない言葉を竜
話で送り、五カ所の公染便所で鉛筆で落書し、五体満足な男に女房を提供すると書きました」
ブルーム「私は豚でした。かん腸までし
て。肛門深く!1婦人の友なるハミル
トン・ロングかん腸器で」
ベラ「出て行け、スカンク!お前に男の役が勤まるか?気を悪くするな。
強い男が代りをしてる」
ブルーム「ひどい。訴えてやる」ベラ「やってみろ、かたわ。おれが欲しいのは土砂ぶりだ」
スティーブン、リンチ、ブルーム。
秘密〃を」
大騒ぎし。
スティーブン「知ってたら歌詞を教えて
ベラ(ブルームに)「これは、のぞきシ
下さい」
ョウでないよ。ピアノを、いためない母「悲しむお前を慰さめたのは誰?お
•酒場 (幻想)
レネハン、ポイラン。
レネハン「大した夜なべだ」
ボイラン「見本通りだぜ」
レネハン「えびにマヨネーズ」
で!(他の者たちに)誰が払いをする祈りこそすべて。悔い改めなさい」
の?」
スティーブン「亡鬼!ハイニナめ!」
スティープン「ぼくたちは一つ会計です」
母「あの世で祈っています。夜、勉強の
リンチ「ぼくからもよろしく」
後はディリーにおかゆを作らせなさ
ベラ「女は三人ね。十シリングだわ」
い。永年愛したお前。私の長男、お腹
スティーブン「それは悪かった」
に宿った時から」
ブルーム家(幻想)
ゾー(ベラに)「寝てもらけた金よ」
ゾーの声「熱い!とけそうよ」
ボイラン、入って来てブルームにたブルーム「十シリングの三倍、いいね」フロリーの声「ごらん、まっさおよ」
ずねる。
ブルーム、ベラに金を払う。
ブルームの声「めまいだ」
ボイラン「夫人は?水割りジンでも飲ベラ「ぬけめないわ。キスしてやる」
母「悔い改めなさい。地獄のごう火!」
みな。案内しろ。君のワイフに私用ブルーム(スティーブンに)「君のだ。
スティーブン「死体を食う鬼、血まみれ
が」
その金は、私にまかせるがいい。なぜ
の背!」
ブルーム「ブルーム夫人は入浴中で」
余分に払う?」
母「気をおつけ!神の御手に!」
二人、二階の浴室の前へ来る。
スティープン「払うべきは払うさ」
フロリーの声「おひゃを」
モリーの声ー
'。
ブルーム「そうかね?なくしたのに資母「イエスさま、スティーブンにお慈悲
モリー「ラウル、来てふいて!入浴帽
任はもたんよ」
を。彼を、地獄より救いたまえ、御心
でスポンジがあるだけよ」
スティーブン「どうだってかまわないよ!」
ボイラン、浴室に入る。
や。街がやかましいな」
スティーブン「黙れ!おれをくじいて
モリーとボイランの声。
ゾー(ブルームに)「私はヨークシャーみろ。おれは必ず勝つぞ」
プルーム、鍵穴からのぞく。
娘。踊ろうよ」
母「主よ、スティーブンをあわれみたま
モリー「見せて苦しめてやりたいわ」
一同、歌い踊る。
え。カルバリ山の愛と悲しみと苦悩は
ボイラン「鍵穴からのぞいて、一人遊び
スティーブン、幻覚におそわれる。
ロに表わせぬものでした」
をしてるがいい」
母親の幼影し。
スティーブン「やめる!」
ブルーム「ありがとう。ワセリンは?
母「私は美しいメイのなれのはて」
スティーブン、深れてランプをこわ
花油とヌルマ湯はいかが?」
スティーブン「お前は誰だ?
いかなる
す。あたりはまっくらになる。
のぞくブルーム。
妖怪のしわざだ?」
ベラ(ブルームに)「ランプの代は誰が
ベラもやってきてのぞく。
声「おかしいぜ。死んだ女」
払う?連れだね。十シリング、誰が
ベラ「彼女の崇拝者」
母「皆が通る道だよ。お前もいつかは死
払う?」
フロリー「ごらん。
したままで部屋中を
ぬ」
ブルーム「たっぷりまき上げたくせに」
回り歩いてるわ。突け!刺せ!」
スティーブン「ぼくが殺したと皆が言うペラ「えらそうな口を!ここは安淫売が、殺したのはガン、運命です」
宿とちがうよ」
〇亮春宿
母「お前は歌ってくれたね。”苦い愛のブルーム「これっぽっち」
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1
ブルーム、何とか言いつくろってスティーブンを追って表に出る。
兵隊、スティーブンを殴り倒す。
路上にのびてしまったスティープ
ブルーム抱き起す。
スティーブン、路上で二人の兵隊に 兵隊2「お巡りがきた」言いがかりをつけられている。
水兵のカー、女にし。
ブルームとスティーブン。
スティーブン「言葉の行きちがいで」
売春婦「客の兵隊が私を残して出ると、若い男が私の所へ来たの。先客が大切
売春婦「兵隊と一緒よ」
スティーブン(兵隊1に)「男敢なる兵
兵隊1「あごに一発」
スティーブン「不快だね。からいばりの手さ。お断りだね」
ブルーム「先生、御者が待ってるよ」兵隊「今、何て言った」スティーブン「君の立場は分かる。祖国のために死ぬ。ぼくなら、ぼくのため国家を死なせる。生命よ、萬歳だ!」兵隊2「急所をけってやれ!」ブルーム「彼は酔っているんです。立派な紳士で詩人です」
兵隊1「何でもいい」
ブルーム「彼は何も言わん。誤解だ」
兵隊2「眼に一発みまえ!
皆2「さし図は受けん。何者だ?」
ブルーム「サイモン・ディーダラスの息子だ。今日、脱馬で勝ったんだ、二〇対一で。私が始末しよう。こんなのはよくあることさ。若い者にはありがち
ブルーム、スティーブンを助け起す
発官たち、去る。
夜ふけの街を行く二人。
ブルーム、スティーブンを見てー。
ブルーム「亡くなった母に似ている。わ
ナレーション1「帰途、二人は語った。
音楽、文学、アイルランド、パリ、友
情、女性、売淫、食療法、カトリックについて。ブルームは、二人の経験反
ナレーション2「両者とも音楽的印象に対しては、造型的絵画的印象よりも、敏感で、正統派宗教や倫理的教義に対して、不倍感を表明した」
ブルーム、鍵がないので中庭から地
ブルーム「行こう」
下室に入って玄関を開け、スティー
売春婦「あんた酔ってるんだわ。でも私、
ブンを招き入れる。
彼を許してやる」
ナレーション1「ブルームは目的地に着
兵隊「許さんぞ!」
くと何をしたか?」
ナレーション2「エクルズ街七番地。玄関の下から数えて第四番目の階段で、合鍵を出そうと尻ポケットに手を入れ
た」
ナレーション1「鍵は?」
ナレーション2「その一日前にはいていたズボンに入れ忘れていたのだ」
ナレーション1「なぜいら立ったか?」
ナレーション2「忘れまいと二度も念を押したのを思い出したからだ」
•台所
ブルームとスティーブン、台所で話し合っている。
ナレーション1「主人は客の何が優れてると思ったか?」
ナレーション2「自、自己放棄と自己回復の反対の等しい力」
ナレーション1「彼の心境は?」ナレーション2「危険を冒さず、期待ももたない。失望しないから満足してい
た」
ナレーション1「損失を受けず、他人に利益を与え、異教徒の光明となって満足した。十一歳で週間新聞シャムロックが、三つの賞金を提供したとき、未来の詩人の彼が創作した最初の詩の結びの一句は何だったか?」ナレーション2「印刷されし、わが詩を見たし。場所を給え、もし許しを得るならば、詩のあとに、わが名ブルーム
を」
ナレーション1「どっちが人種の差別に
ふれたか?」
ナレーション2「なし、最も簡潔なる相互形式に要約された。ブルームならびにスティーブンの相手の考えに対する
考えは如何?」
ナレーション1「一人はユダヤ、一人は非コダヤと考えた。ブルームは、人生大学で、学んだことを、なぜかくした
?」
ナレーション2「なぜなら、この件についてはすでに、お互いに語られたかどうか、あいまいに思われたからだ」
ナレーション1「彼らは次のいずれを代表するか?」
ナレーション2「科学的?芸術的?
梅印の缶詰肉のない家庭は?不完
全」
ナレーション1「これがあれば幸福」
ナレーション2「家庭上のどんな問題が彼の心をひいたか?細君をいかに扱うか?」
ナレーション1「ブルームは、室に夫婦の寝室のすぐ隣りで、台所のま上の室に今夜泊るようにとすすめた。これが長びけば数々の利点がある」
ナレーション2「スティープンには住居と勉強」
ナレーション1「ブルームには知力の若返りとある満足感」
ナレーション2「モリーには緊張の緩和と、正しいイタリア語の発音の習得」ナレーション1「宿泊は、承諾されたか
?」
ナレーション2「これは即座に、体よくいんぎんに、謝意をこめて拒否され
た」
•中庭
スティーブン、帰りかける。
二人、立小便する。
スティーブンを見送るブルーム。
ナレーション2「最初に主人が、次いで客が家の背後より通路を、暗閣の中から庭園のおぼろの中に現われた時、どんな光景が待っていたか?」
ナレーション1「星の天のが夜空に青くかかっていた。両者はそこに沈黙し
た」
ナレーション2「彼らは、お互いの顔の中に映るおのれの顔、その中の相手を熱視しつつ、はじめは順々に、やがて一緒になった。立小便は同じでなく、ブルームのは長く、規則的で、スティーブンのそれは、より高く、よりかしましかった。それは、前夜の利尿飲料で膀胱を圧迫したためだ」
ナレーション1「ブルームは、何を聞い
た?」
ナレーション2「地球を遠ざかる足音の二重の反響と、ユダヤの琴の共鳴の二重の振動を。ブルームは一人、星と星の間の冷たさと、近づく暁の初期の暗示を感じていた」
•寝室
ベッドに寝ているモリー。
寝る支度をするブルーム。
ナレーション1「完全な一日に、どんな不完全があったかを、ブルームは数えたか?」
ナレーション2「広告の再契約を得ることの一時的失敗。ギリシャ女神の場合後部の直腸口があるかないかを、確かめなかった失敗」
ナレーション1「妻の夜の質問に答えて
の五週間前が完全な交渉の最後だっ
た」
ナレーション1「(ささやく)疲労せる小児、大人、子宮内におる胎児、子宮は疲労し、彼は休息する。彼は旅行した。船乗りシンドバッド、仕立屋ティ
ンバッド、獄更ジンバッド、釘作り=
ンバッド、鯨とりウインバッドとし」
• モリーの回想・幻想
時計のフリコが動く。
眠っているモリー。
天井
女中のメリー
ボイラン
神父
モリー、オフ・シーンから。
モリー「ベッドの中で朝食なんて言ったことなかったわ。卵二つも!朝食だなんて!あの食欲からみて何かいわくがあるわ。恋愛なら食欲どころでないから、どうせその辺の淫売よ。彼を知ってたらね。自分に思召しがあると思って。男ってそうよ。
彼から金をしぼるこんたんさ。中年の男はバカね。変な所へキスしてごまかすのよ。相手が誰であろうと別に気になんかしないわ。あの人をそそのかすために、お尻に詰め物したメリーのように、昇先でいちゃつかない限りはね。男は女一人で満足しない。スパイのまねなどまっぴら。どうせ辛抱できずに、どこかですますのよ。女の破減だわ。満足も得ずに、気に入ったふりをして、すませるの。唇がまっさおになるわ。
彼はキアナンの赤線地域における内部での公開論争、また女性の露出症によ
る肉感的挑発は省略し、小罪の甘さ”
と称する好色趣味の苦についてだけ説明することにした。彼の行為は?」ブルーム、モリーのそばに頭と足を反対にしてすべりこむ。
ナレーション2「慎重に情欲のベッドに入るときの如く軽やかに、なるべく物音をたてずに、うやうやしく、懐妊と誕生、結婚の完成、婚姻の破、睡眠と死のベッドに蛇のようにすべりこ
む」
ナレーション1「四肢が伸びた時、何にさわったか?」
ナレーション2「新しいリネンと、それに伴う香気。彼女のものである女性の肉体の存在に、彼のものでない男性の肉体の残した痕跡に、残されたパン
屑、温め直した肉の残片に、それを彼は捨てた」
ナレーション1「最後にそこに寝たものについての反省は?
旺盛な精力、別
の意味できざっぽさ、肉体の均驚、ま
たの意は男色。商売の方ーつまり山
師感受性1高音への反省」
ナレーション2「彼の談話中きわ立ったのは誰か?」
ナレーション1「教授で著者スティーブン・ディーダラス」
ナレーション2「この直接的な談話の進行中双方は婚姻の適合性の限界について考えた。すなわち、女性との体液の射出を伴う交渉は、十年五ヵ月十八日間行なわれなかった。つまり、彼らの唯一の男児ルドルフ・ブルームの誕生
それでとにかく何もかもおしまい。世間ではいろいろ言うけれど、大切なのは最初。あとは当たりまえのことよ。結婚しない同士でキスはいけないの?狂おしいほど燃え上って、が主んできなくなった時など、長い熱いキスは体中をしびれさすわ。私、サングは嫌い。神父の所へ通ってた頃、言ったわ。彼が私にさわったの。いけません?運河の土手でバカみたいに。お前のどこにだね?脚のうしろの奥の
方かね?
ええ、上の方。坐る所かい
?なぜ〃お尻か?^と言えなかったのかしら?
それで?忘れたけれど
何とかしたかって。
いいえ。いつも父を思い出すわ。神に告白したのに、何を知りたかったのかしら?私の顔は見えなかったはずよ。もちろん彼はふり向かないし、他
侶に女は禁制よ」
ボイランの姿。
ナワトビをしている子供たち。
ボイラン。
仮面。
子供。
ルディ。
ダブリンの丘。
ガードナー、マスチャンスキ夫人。
肉屋、干物。
ジブラルタルでの思い出し。
等々、無数のイメージ。
モリー、オフ・シーンから!。
モリー「彼は私に満足したかしら。いやだったのは、なれなれしくお尻をぶったこと。馬やロバであるまいし。いま娘は夢でも見ているかしら。私の夢を。
私たちの食べた肉おいしかったわ。私は、快い疲れでベッドに入ると、すぐ眠ったわ。
この古ベッドは、ひどくきしんで公園の向う側まで聞こえるわ。床にフトンをしいて、腰に枕をあてた方が!!。
ジブラルタルみたいな怖い雷鳴。世間の人は、神などいないと言うわ。彼は笑うわ。ミサにも行かない人よ。魂などない。あるのは機物だけ。そういう
わ。
魂など知らないのよ。そうよ、彼はあ
の巨大な武器で、矢つぎばやに攻めたんだわ。香水をかけ、髪をなでた後、ブラインドをおろし服をぬぎ、そのあとでのあの人はものすごかった。たっふりカキでも食べたんだわ。声は強く、深かった。あれほど私を満たしてくれたものはなかった。荒れ狂う種馬も受けいれるように作った神さまのはたらき。彼らが私たちに求めるのはそ
れだけ。邪悪の眼。私は半ば眼をとした。早めに彼を引き離した時には、思ったよりもその力は静まっていた。
その方が安全だったのね。最後に、彼は深々と私に沈んだ。すべての喜びを男に与える神の思召し。ルディを生んだ時の私のあの苦痛。ミナの亭主は、毎年、規則的に子をはらませる。ふくらませなけりゃ気がすまない。そんな男と結婚するんなら死んだ方がましね。彼には、私みたいに合う女はいないんだわ。
彼のくどき方がよかったわ。八日生れの私に、ケシの花を八つ贈ってくれて。でも抱擁は下手。ガードナーみたいではなかったわ。顔色が悪い。鏡では表情は分からないものよ。それに、彼は大きいお尻でのしかかってくる
わ。
この暑さに毛深い胸は重苦しいわ。いつも押しつけられて体位を変えるといいわ。マスチャンスキ夫人みたいに、犬を見習うといいだなんて。男のハラって分からないわ。でも彼が夕刊を持って、馬券を裂きながらとびこんで来た時は、悪魔みたいだったわ。
私のために賭けた馬が負けて損したって。とにかく、このままじゃシュミーズが二ついるわ。ズロースはどんなのが。いらないっていったかしら。ジプラルタルでは、娘の半数ははいてなかった。マノーラを歌った娘は隠そうとしなかったわ」
キャベツの薬で、前をかくして立っている。
裸体のボイラン。
水をかけられるブルーム。
ダブリンの丘。
男の銅像。
さまざまなイメージ。
モリーのモノローグー。
モリー「こんなのが二つ同じにできてるの。不思議ね。美をあらわすとされてるなんて。博物館の彫刻のように上についてて、一つを手でかくすようにして。あれで美しいの?
もっとも男が
二つの袋をさげて、もう一つが立って
るのにくらべればね。キャベツの葉でかくすの当然よ。
女は美しいわ。あれで歩き回って蹴られるの、怖くないかしら?誰か、新聞にのせるといいんだわ。もし、私が半分も覚えてて本に書けたらね。カポ
ルディー先生傑作集”だわ。
男たちが女から味わう快感。あの人の口の感触。私、体をのばしたい。彼か誰か私を夢中にさせてくれればいい。
体中が火のようにほてり、夢見心地で、二度も夢中にさせ、指でうしろをくすぐり。夢中で五分ほど足と手で抱きついていたっけ。夢中で叫んでみたかった。醜悪でないかぎり、どんな言葉でもよかった。
歓喜の絶頂でもらす言葉なら、男がどう感じとるか知りたいわ。皆が彼みたいではない。あなたの喜びを望む人、対照的にあの時口をきかない人。私は、ふり乱した髪で彼の方を流し眼で見たわ。唇の間から私は彼にふれた。
野蛮なけだもの。私があれほど求めていた人を、与えてくれた神に私は感謝するわ。ここでは昔のような機会などはない。
誰か私にラブレターを書いてくれるといいわ。それは何かを考えさせ、私の回りを新鮮にする。返事はベッドで普く。短かく簡単に。私の名がブルームになるとは思わなかった。でもお尻でなくてよかった。ラムスボトム夫人などよりは。また汽車の音。泣いてるわ」舞台に立つモリー。
モリーの歌声し。
〃思い出もはるか
すぎさりし日々
眼をとじ
唇をつき出し息をする
キスして、悲しい表情
両眼をかすかに開いて
世を包むものは
再び深いくる袋
わたしは嫌いだわ
流れくる愛の
甘きその歌声
則光の前に立ったら出すわ〃
モリーとガードナー
食事。
ブルームのポケットをさぐるモリ
1。さまざまなイメージ。
モリーのモノローグー。
モリー「カスリン・キアニーや雀っ子たちは政治の話でとび回ってるわ。何も知らないで。借心は男にもてないからよ。ガードナーは、私の口が魅惑的だと言ってたわ。
彼は、私のアクセントを嫌いかと思っ
たわ。眼と姿は母親似。彼は私の唇に夢中だったわ。見て似合いのを夫を持たせるのよ。さもなければ金持でしかも、ボイランみたいに長く女を喜ばせるような男を射とめるんだわね。私まちがって結婚したんだわ。
いにしえの恋、あごをひいて、二重にならぬよう。うらやましがらせてやろう!
医学生とは遊ばせない。若返ったと思って。お金を浪して、酒ばかりのんで、水でいいわ。朝、コップをかたつかせて、階段を上る音がすき。
それから、卵と紅茶とトーストの注
彼みたいな習慣の人はいないわ。蹴ったり歯を折らないのがまし。教会の鐘だわ。誰にしろ、今頃帰ってくるなん
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て立派よ。まずシャツ、手帳にサックをはさんでるかしら。知らないと思ってるんだわ。男って嘘つきね。
嘘をかくすには、ポケットが二〇でも足りないわ。こっちが本当を言っても信じてくれやしない。毒を盛ってやるといいわ。それから紅茶とバター・トーストと新鮮な卵。彼は生来の嘘つき
よ。
人の女房に手を出す男気はないわ。デニスは、彼女の夫なんていう代物じゃないわ。
彼の相手は、どうせ安淫売よ」モリーとスティーブン。
ベッドの上の二人。
海岸の二人。
スティーブンと息子のイメージ。
モリーのモノローグ。
モリー「著述家でイタリア語の教授。私も習うはずよ。なぜ私の写真を見せる
の?
出来は悪いけど若く見えるわ。
くれたんじゃないわね。私もつけていいのよ。私、喪服を着てたわ、十一年前。生きていれば十一よ。どうでもいいものに喪服して何になる?彼の主張よ。猫のため。坊やは今頃もう大人だわね。
あの頃は無邪気な坊やだったわ。彼は私を好きだったわ。覚えてるわ。今朝
広げたカルタに出てたわ。前に会った、黒影でも金髪でもない青年と一緒に。彼だと思ったけど若造でないわ。
皆、詩の中で女を書く。私のような女は珍しいわ。柔らかい愛のタメ息、ギターの調べ、漂よう詩情。彼は優れた詩人よ。そういう人に会いたい。他のボンクラはごめん。それに若いわ。マ
1ゲイトで見た、たくましい岩人たち。岩かげからのぞいた素裸で太陽の下に立ち、皆で次々と海にとびこみ、男が皆ああだと女の慰めだわ。
彼が買ってくれた、彫像のように一日中眺める。それこそ真の美で詩だわ!
時々体中にキスしてやりたい。その可愛い若い単純なシンボル。誰もいなけりゃキスしたいわ。吸ってと言ってるわ。清潔で、純白で、あどけない顔。
いいと思うわ。キスして吸いこんでも、あんなに清潔なんだから危くはないわ。
しかも、年がら年中、洗おうとも考えないような、豚どもとくらべたらきれいなものよ。でもロヒゲが生えるって。この年で若い詩人とできたらすてきね。明日の朝、まずカルタ占いだわ。よく読んでしらべておくわ。誰を好きか分かったら、女をバカだと思うなら、教えてやる。気が遠くなるまで感じさせてやる。
彼が有名になれば、恋人で思いものの私について、写真入りで書くわ。彼はどうする?夫はいいが、恋人はだませない。彼は、作法も上品さももちあわせないわ。
私たちのお尻をあんな風にたたくだなんて。彼を”無知のヒュールと呼ばなかったからって。彼らを甘やかすからなのよ。目の前で靴やズボンをぬいだり、シャツ半分の姿でほめられようとつき出したり。冗談に暇をつぶすのはいいけれど、それくらいならライオンと寝る方がいいわ。ライオンの言い二と
うなことでも言ったら?私の乳房が誘惑的だったからとは思うけど、私も時に興奮するわ。男が女から喜びをひき出すのはいいわ。いつも丸くて白くて。たまに男だったらと思うわ。私たちの上で、固く、またやわらかいあれを一度使ってみたいわ。
また男に戻るけれど何でも選べるんだわ。人妻、未亡人、娘、皆味わいがちがう。女は鎖につながれたきり。わたしは鎖につながれないから平気よ。一度やり出したら、バカな夫の嫉妬なんか。なぜ、皆仲良くできないのかしら。この欲望は何のため?若かったら我慢できないわ」
ベッドに寝ている、モリーとブルー
ム。
モリーの回想~。
丘の上を行くモリーとブルーム。
海。
モリーのモノローグ。
モリー「冷たい男。眠っても誰かも知らず、足に抱きつく以外何もしてくれない男。女のすべてにキスしてくれる男なら尊敬するわ。あとは何にでもキスできるわ。私たちはラードの固まりよ。
男にあれをする前に。フン、不潔なけだもの。考えただけで沢山。お嬢さん、おみ足にキス。気ちがいよ。彼の考えが分かるのは私だけ。もちろん女は若く見せるためには誰でもいい。愛するか愛されている限りは、一日に二
〇度は抱かれたいわ。好きな男がいなけりゃ。神様、わたし時には暗い晩波止場へ出かけて、女に飢えている水夫
ING CROWD
を拾いたいと思うわ。要するに、門のあたりですませればいいんだわ。それとも、狂暴な顔のジプシーでも。澄ん
だ眼の暴漢が、暗闇でおそいかかり物も言わず壁に押しつける。
半分は悪い病気の持主だわね。その大きい図体を少しずらして、後生だから。
聞いてハタメ息を君に伝える風よ”。
よく眠るわ。偉大な予言者ドン・ポロ
・デ・ラ・フロラ。主人が寝てる間、私は朝食の支度で台所をはい回れと言う。私はそんなことするかしら。一度やったら、男は女を見くびっちまう
わ。
何と言おうと世の中は、女が支配した方がいい。女の大量殺人なんて見たことある?いい息子がいて満足しないなんて!私はないわ。彼が作れなかったのかしら?街で大の交尾してるのを見てそそのかされた。あれで私は気落ちした。子供はジャケツのまま葬ったが、哀れな子にあげるんだった。
最初の児を失なって、もう出来ぬと思った。
私たちは変った。あれを考えて暗くなることはよそう。あの人は、なぜ夜泊ろうとしなかったのかしら?夜って淋しいわ静かで。もし私が誘ったとしても、それはあの人の罪よ。涙の谷でしたことが、それだけだとしたら、ささいなことよ。誰でもするわ。隠してるだけ。女はそのためにあるのよ。
でなけりゃ、神は魅力的に造らないわ。神がいないなんていう人は、私相手にしないわ。何か創ってみるといい
15
のよ。それでいて、死ぬ時は神父を呼ぶ。それは、地獄行が怖いからなのよ。
知ってるわ。神さまの前に、この世にいた人は誰なの?誰も知らない。私も=だが我々はここにいる。明日の太陽を望まぬ人がいるかも知れないが、太陽は君のため輝やく!ー」花の咲き乱れる岬。
抱き合うモリーとブルーム。
長い抱擁。キス。
重なり合う二人一。
モリー「ホウス岬で花の中に寝て、彼は言った。私が彼にプロポーズさせた日だった。私は口移しに彼に菓子をやった。うるう年だった。十六年前ー長いキスの後で、息がきれそうだった。
私たちは何もかも花だった。女の体も!それだけが彼の唯一の真実だった。太陽は君のため輝やく。彼のそこが好きだった。彼は女を感じてくれた。私は彼にできる限りの喜びを与えた。最後に、ウンと言えと嘆願した
わ。
はじめ私は答えないで海と空を見たわ。あの底知れない葬流。海、炎のように燃える真紅の海。そして壮厳な日没。植物園のいちじくの欄。奇妙な小路と多彩な家々。バラ、ジャスミン、ゼラニウム、サボテン。私がまだ花だった頃のジブラルタル。髪にバラの花をさした時!赤がいいかしら。彼はムアの城壁の下でキスしたわ。彼はすばらしかった。私は眼で彼に頼むように促した。彼は聞いた。ぼくの花よ、ええ、と言ってくれ。私は腕を回し、いいわ」
(F・O)
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