マレーシア機撃墜、ロシア当局者ら4人起訴へ マハティール首相「ばかげている」
2014年にマレーシア航空の旅客機が撃墜され、乗っていた298人全員が死亡した事件で、国際合同捜査チーム(JIT)は19日、ロシア人など4人を殺人罪で起訴すると発表した。マレーシアのマハティール・モハマド首相は翌20日、この結論を「ばかげている」と非難した。
マレーシア航空MH17便は2014年7月17日、ウクライナ東部の上空を飛行中に墜落した。オランダ当局は翌年、ロシア製のミサイルで撃ち落されたと判断を示した。犠牲者の国籍は、オランダ人が最も多かった。
長期にわたって捜査を続けていたオランダ主体のJITは、ロシア人3人とウクライナ人1人が撃墜に関わったと結論づけた。ロシア人は全員、同国の治安当局と関係が深いという。また、ウクライナ人を含め4人とも、事件当時はウクライナ東部における紛争に関わっていたとされる。
裁判は被告の出廷の有無にかかわらず、2020年3月9日にオランダで開かれる予定。
ロシアを擁護
JITの結論に対し、マハティール氏(93)は、「この件は最初から、いかにロシアの犯行として非難するかという政治問題になった」との考えを表明した。
また、「今のところ証拠はなく、伝聞情報しかない」とし、ロシア側の関与を示す証拠を求めた。
そうした発言が、マレーシアの経済を支えるパーム油の取引と関係しているのかと質問されると、関係を否定した。マレーシアのメディアは、政府がロシアから戦闘機などを購入する見返りに、ロシアがパーム油の輸入を増やす計画があると報じている。パーム油は過度の森林破壊を引き起こすとして、欧州委員会は2030年までの段階的な使用中止を勧告している。
一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も20日、JITの結論を受け入れない考えを示した。
「落胆と混乱を招く」
ただし、JITにはマレーシアも参加している。同国外務省は、捜査結果を支持する声明を出した。
オランダのマルク・ルッテ首相は、マハティール氏の発言を問題視し、「(犠牲者の)親族は当然ながら非常に落胆するだろうし、混乱を招くだろう」と記者団に述べた。また、オランダとマレーシアの外務省が互いに連絡を取り合っていることを明らかにした。
4人の容疑者
JITや検察によると、殺人の疑いがかけられているのは次の4人。
- イゴーリ・ギルキン容疑者――ロシア連邦保安局(FSB)の元大佐。ウクライナの反政府勢力が支配していた東部ドネツクで、防衛相の役割を担っていた。本人は事件への関与を否定している。
- セルゲイ・ドゥビンスキー――ロシア参謀本部情報総局(GRU)の職員。ロシアと定期的に連絡を取っていたギルキン容疑者の代理役だった。
- オレグ・プラトフ――GRU特別部隊の元兵士。ドネツクで諜報部門のナンバー2だった。
- レオニド・ハルチェンコ――唯一のウクライナ人。ウクライナ東部で反政府の戦闘部隊を指揮していた。
ロシアは「証拠ない」
JITの捜査では、撃墜に使われた地対空ミサイルは、ロシア南西部クルスクの同軍第53旅団からウクライナ東部に運び込まれた証拠があるとされている。
これに対しロシアは、使われたミサイルがロシア領内から運ばれたという証拠や、ウクライナ軍に対する親ロ派の戦闘にロシア当局が関与したという裏づけはないと主張している。
JITが19日に開いた記者会見では、事件6日前の携帯電話でのやりとりを盗聴したとされる音声が公開された。ウクライナの親ロ派が一方的に独立を宣言した「ドネツク人民共和国」の元トップ、アレクサンドル・ボロダイ氏と、プーチン氏側近のウラジスラフ・スルコフ元副首相が、ロシアの軍事支援について相談していた時のものとされる。
ミサイル要請の電話か
これより前に盗聴された会話の録音では、イゴーリ・ギルキン容疑者が、ロシアが併合した直後のクリミア地方にいたロシア側指導者、セルゲイ・アクセノフ氏に、地対空ミサイルを要請していたとされる。
ロシアの軍事専門家は同国タス通信に、戦闘の「真っ最中」だった当時、スルコフ氏は機密上の理由から、ウクライナ東部の分離派指導者たちと一度も電話でやりとりしていないと説明している。
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