2022年5月1日日曜日

宝船とは - コトバンク

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宝船(読み)たからぶね

日本大百科全書(ニッポニカ)「宝船」の解説

宝船
たからぶね

正月の縁起物の一つ。帆掛け船に米俵宝物を乗せ七福神が乗り込んだ絵に、「なかきよのをのねふりのみなめさめなみのりふねのをとのよきかな」という回文(かいぶん)歌が書かれている。これを正月2日の夜、(まくら)の下に置いて寝ると吉夢をみるという。古くは除夜の晩とか元日とか、または節分の夜とかにされていたが、今日では正月2日とされている。江戸時代から明治時代にかけて、「お宝お宝」といってこの絵を売り歩く宝船売りがいた。本来宝船はいまと違って、宝物や七福神を乗せたものでなく、旧年来の災いを船に乗せて流すもので、そのあと節分に吉夢をみるのであった。七福神は大黒天、恵比須(えびす)、毘沙門天(びしゃもんてん)、弁財天、福禄寿(ふくろくじゅ)、寿老人、布袋和尚(ほていおしょう)とされているが、現代のように定められるまで、いろいろと異説があった。宝船の歌については、『和訓栞(わくんのしおり)』に、聖徳太子が秦河勝(はたのかわかつ)の悪夢を消し給(たも)う呪(まじな)い歌という説があるが心得がたいとある。宝船の絵については、『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』に『安斎(あんさい)随筆』などを引用して、古代にはなく室町時代からはみられたとある。船の帆に「獏(ばく)」という字を書くのは、中国でいう想像上の動物である獏が悪夢を食べるといわれているためである。いずれにしても、宝船よりも初夢を気にすることが古かったことは明白である。

[大藤時彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)none日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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